――これから更に年齢が高い人たちの物語が日本でも増えると良いですよね。今後、演じてみたい役などありますか。
どんな役でも、演じたいですね。『To Leslie トゥ・レスリー』(2022)や、『ANORA アノーラ』(2024)のラストシーンのような切なくも言葉では表現できない、なんとも言えない表現を出来るようになりたいと思っています。台詞ではない雰囲気だったり、表情であったり、存在で表現出来るようになりたい、ならなければとずっと思っています。
『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』(2022)も中年女性の心の迷いからSF映画の展開になって面白かったですよね。ミシェル・ヨーさんはアクションも出来てカッコ良くて憧れます。

――石田さんは、本当に色々な映画をよく観られているんですね。母親も経験されて、これからご自身はどんな人生を望んでいるんでしょうか。
私はただただ必死に生きて来ただけです(笑)。16年間作り続けたお弁当人生も終えまして、ようやく娘達も成人しました。ようやくちょっと落ち着いて“彼女たちの目に、そんな私はどう映っていたんだろう?”と思うようになりました。聞くのは怖いですけれど。今、52歳なのですが、ちょうど50歳ぐらいの時に、子育てがひと段落したのですが、その時、ちょっと面白いと思ったんです。人生100年と言われている中で、ちょうど半分が誰かの為に生きたというか、50年のうちの後半の20年ぐらいは、自分以外の人、子どもや家族の為に必死に生きました。それは結果的には自分の人生を豊かにしてくれる出来事でもありました。それを経験して、これからの50年は、自分の為に時間を使うことが出来ると思うと、もの凄くワクワクしたんです。
具体的な計画はまだありませんが、人生の後半は元気であるうちに色々な所にも行きたいですし、出来るだけ多くの作品を残せたらいいなと思っています。仕事の面では、草笛さんのように、いつまでも現場に立っていたいです。私は、たくさんの人たちと、あーでもない、こーでもない、とモノを作り続ける「現場」が大好きなんです。あといくつの作品が残せるかなぁ。
映画が大好きで、よく映画館へ行くと語っていた石田ひかりさん。そんな石田さんが尊敬する草笛光子さんは、90代で2作目の主演作を。最近になり、日本でも年長者の主演作が制作されるようになったのは嬉しいことだと語っていました。年長者の映画だからこそ逆にエネルギッシュで生命力に満ちている。そしてとびっきりチャーミング。それがこの映画『アンジーのBARで逢いましょう』。人間愛に満ちていて、どんな人も色眼鏡で見ずに対等に付き合う主人公から、人生に潤いを与える術を学ぶ作品です。
ヘアメイク:神戸春美 / スタイリング:藤井享子(banana)

「風に吹かれた」と突然町にやってきたアンジーは、いわくつきの物件でBARを開き「人間まともなもん食わないとだめよ!」「本当に怖いのは人間だけだ」「過去に追いつかれると食い殺されちまうからね」「いくつになっても生きることは簡単じゃないの。面倒だし複雑だし汚いことだらけ」と、心に刺さる名言を厳しくも優しく投げかけながら、悩み多き町の人々をだんだんと変えていく。
監督:松本動
出演:草笛光子、松田陽子、青木柚、六平直政、黒田大輔、宮崎吐夢、工藤丈輝、田中偉登、駿河メイ、村田秀亮(とろサーモン)、田中要次、沢田亜矢子、木村祐一、石田ひかり、ディーン・フジオカ、寺尾聰
配給: NAKACHIKA PICTURES
©2025「アンジーのBARで逢いましょう」製作委員会
2025年4月4日(金) 全国公開
公式サイト angienobar
