――本当にそうですね。今回の衣裳もとてもチャーミングで、石田さんの衣裳もこだわりを感じました。
私は「草笛さんが赤いドレスを着られる」と知った時、心が震えました。衣裳合わせの時にお写真を見せて頂いて本当に素敵で‥‥。実際に現場で赤のロングドレスを着られていて、本当にカッコ良かったですね。私は霊媒師を演じる木村祐一さんと色を合わせて、何かに盲信する人というイメージから白になりました。そして草笛さんが赤いドレスで、私とキム兄に「帰れ!帰れ!」と塩を投げつけてくるあのお姿は、一生忘れたくないと本番中に思っていました。

――今回の草笛さん主演作だからこその出演依頼を考えると、色々な映画をご覧になっているんですね。
私は「一人の映画好きのお客さん」として映画を楽しんでいるので、監督のカット割りや編集などの特徴を正直、あんまり気づいていないことが多くて。ダメですね‥‥。ストーリーや、俳優さんのお芝居をどうしても追ってしまいます。出来る事なら映画館の隣に住みたいくらい、映画館が好きで、もちろん配信でも観ますが、日々スケジュールをチェックしては、映画館に足を運んでいます。昨日は早速『ANORA アノーラ』を観てきましたよ!最高でした!そんな中でも早川千絵監督の『PLAN 75』(2022)は衝撃的でした。あの作品は、カンヌ国際映画祭でカメラドール特別賞をはじめ、世界中で評価されていると聞いています。この『アンジーのBARで逢いましょう』もぜひ海外の映画祭に出品して貰いたいですし、海外の方にも観て欲しいと思っています。
――海外の観客には、どんなところを観てもらいたいですか。
まずは、90歳の草笛さんの姿を観ていただきたいです。この作品は色々な登場人物の人生が絡み合っているストーリーなのですが、私はそこも凄く面白いと思いました。大作というわけではありませんが、日本映画は、こんなにもユニークで個性的な作品を作ることが出来るということも知って貰いたいですし、お洒落な作品なので、海外の方にも絶対楽しんでいただけると思います。

――社会的弱者も登場します。この映画は居場所を作る物語なんですよね。
そうですね。そして草笛さん演じる謎めいたおばあさんが、皆の居場所を作り、結果的には皆を幸せにしていく。本当に「幸せなおとぎ話」で、良いセリフが沢山詰まっています。人生何とかなる、自分と仲良くしていこう、と優しい気持ちにさせてくれる作品だと思います。
――海外では年齢の高い人が主人公を演じる作品が、結構作られています、でも日本は少ないような気がします。
そうですね。『PLAN 75』の時も、予告もたくさん観ましたし、何より「倍賞千恵子さんが素晴らしい」という話を聞いて “絶対に観たい”と思いまして初日の初回で観ました。ちょうどそれくらいのご年齢の方々が多かったのが印象的でした。そして満席でした。正直、年齢が上がると女性の場合は、誰かのお母さんといった役が多くなるので、倍賞さん主演でしっかりとその女性の感情を映し出すストーリーや演出に感動しました。
最近は、長塚京三さん主演作『敵』(2023)や、藤竜也さん主演作『高野豆腐店の春』(2023)なども公開され、役所広司さんもカンヌ国際映画祭で最優秀男優賞を受賞した『PERFECT DAYS』(2023)をはじめ、主演作が作られるようになってきました。年を重ねた俳優の皆さんが主演される作品が日本で製作され、公開されることはその背中を追い続ける私たちにとっても嬉しく、大きな目標になります。