『EUREKA ユリイカ』でカンヌ国際映画祭批評家連盟賞、エキュメック賞ダブル受賞を果たし、独自の世界観を生み出してきた“顔”のある監督、青山真治監督。『共喰い』以来、7年ぶりとなる最新作は、現代社会に生きる女性たちの“繋がっていない心と身体”であり、映画、ドラマ、舞台と、様々な物語の中で、忘れられない“顔”を残す多部未華子さんが主演。J-POPの作詞家であり小説家の小竹正人氏による原作を映画化した『空に住む』は、間違いなく青山真治監督の新境地でした。10月23日(金)全国ロードショーを前に、本作で主演を努めた多部未華子さんにお話を伺います。
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――まずは、オファーを受けた理由を教えて下さい。
青山真治監督だったからですね。ガッツリご一緒したことはないんですが(笑)、映画らしい映画に出演してみようと思ったんです。
――そんな青山監督の作品で、好きな作品は何ですか?
『月の砂漠』(公開:2003年)です。この映画も独特で、青山監督は“こんなことある?”というのが好きなんだと思いました(笑)
――スター俳優、時戸森則役の岩田剛典さんとの共演シーンがとてもチャーミングでした。岩田さんとの共演はいかがでしたか?
一緒の撮影が4~5日しかなかったのですが、岩田さんの役が少し変わった役だったので、私は現場で何度か笑ってしまいました(笑)、でも岩田さん自身は凄く素朴な方でした。
――確かに面白い役でしたよね。私は今まで岩田さんが演じられてきた役の中で、今回の役の演技が一番、印象的でハマっていると思ってしまったくらい。
高畑充希さんと共演された『植物図鑑 運命の恋、ひろいました』(公開:2016年)など、岩田さんの出演作を結構観ているのですが…そうですか?意外ですね。だけど、確かにそうおっしゃる方が多いみたいですね。
―― 会話とかされたのですか?
岩田さんとの撮影が数日だったので、あまり出来なかったです。“タワーマンションに住んでいますか”という会話ぐらいでした(笑)
――あのマンション豪華ですよね。
実はあのマンションは部屋の中がセットで、窓の外は全てCGなんです。景色も見えなくて、実は全てブルーバックでの撮影だったんです。
――ブルーバックの前での演技、大変だったのでは?
タワーマンションに住んだこともなかったので、“あそこら辺に、岩田さんの顔の看板があって、こんな感じの景色なのかな”みたいな感じで、ずっと想像をしながら演じていました。
――まさかのブルーバックでの撮影だとは全く気付かなかったです。青山真治監督と今回ご一緒してみていかがでしたか?
青山監督に限らず、私は監督とあまり話したりしないんですよね。台本で疑問に思ったところがあったとしても聞きに行かないですし、青山監督からも私に、“どう?”とか“どんな解釈をしたの?”と質問されるようなこともなかったので、とても良い距離感を保てていました。撮影中は、ほとんど喋っていなかったので、逆にどう思っていたのか、今になって伺いたいくらいです(笑)
ドラマの現場では、視聴者の皆さんに伝わりやすい内容をやっていることに楽しみを感じています。今回の映画は、脚本を読んだ段階では本当にわけが分からなくて、そんな中で自分なりに解釈をして撮影に参加しました。出来上がった作品を観て、分かりやすい表現じゃない2時間って“いいな”って思いましたし、色々な空気の現場に居られることに、凄く幸せを感じました。やりがいは、色々な空気感に触れられること。それを凄く楽しいと感じながら過ごしていますね。
――脚本を読み砕いて演じられたということですか?
今回の脚本を読んだ時、台詞自体が分かりやすいものではなくて、なかなか理解が出来なかったんです。なので“分からないな”と思いながら演じていました。でも“こんな台詞言えないよ、意味わかんない”というのはなかったんです。それって不思議な感覚ですよね。