Feb 19, 2025 interview

藤堂日向インタビュー 北村匠海の苦悩と葛籐がたくさん散りばめられている短編監督デビュー作『世界征服やめた』

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――藤堂さんは俳優という仕事について悩んだ時期もあったとお聞きしています。今の自分が昔の自分に話しかけるとしたら、どんな言葉をかけますか。

そうですね、昔の自分に何て言葉をかけたらいいんだろう‥‥、凄く難しいです。でもやっぱり、「愛してくれる人たちは居るよ」という言葉は伝えたいです。その言葉だけで十分だと思います。

――この映画の撮影が終わって、新しい感覚は生まれましたか。

かなりありました。初めての感覚もありました。やっぱりお芝居って熱が入ると温度が上がって、心臓も凄くバクバクして、手も震えるはずなんです。憤りというか、感情がMAXになると生理的に震えてしまう気がするんですが、実はそれが今回の撮影では、なかったんです。それが面白かったです。

――何故なんでしょう。

なんででしょうね?(笑)。撮影時は、とにかく“感情をここでベタ踏みしてはいけない”と思っていったんです。だからギリギリのところで“伝えないといけない、この言葉たちを”という気持ちがポエトリーリーディング(主に詩人が自作の詩を読み上げること)のような感覚だったのかもしれません。伝えなくちゃいけないから超えてはいけない線があるみたいな、理性と狂気の狭間に片足を入れているけど、感情はこちらにあるみたいな感じです。そんな境界線の間にいた感覚が、今思い返してみると今回はありました。そんな感覚になったのは初めての経験でした。

――面白いですね。そんな現場でのバディ的な存在を演じた萩原利久さんとの共演はいかがでしたか。

僕の役はとにかく聞き役で、受けの芝居でした。利久の演じる【彼方】は無視しているように見えて、全然、僕を無視していなかったんです。そんな感じで僕は彼を見ている役だったので、僕はず~っと利久のことを見ていました。彼がツンツンして無視しながら“うるさい奴だ”と思っているんだろうなと思って、ニヤニヤしていました。とにかく彼(利久)の演技が良くて(笑)。しかも僕の演技に対して、ちゃんと僕に届くようにストレートにお芝居を返してくれるんです。「やっぱり、利久は演技が上手い」と僕は思いました。佇まいで動かされるというのは、利久が持っている特徴の一つだと思います。僕はその立ち姿、佇まいで心を打たれた瞬間がいくつもありました。そういった魅力はお芝居中にもヒシヒシと感じていました。

――本来【彼方】と【星野】は2人で1つの役ですよね。

そうですね、表裏一体です。