――画が凄く綺麗でした。そこにクレージーな感じがプラスされていました。城定秀夫監督と内藤瑛亮さんの脚本に皆さんが揃ったことで、良い意味でのクレージーさが生まれていて楽しかったです。出来上がった作品をご覧になってエッジが効いていると思ったところはありますか。
田口 凄く現代的なテーマですよね。丁度、本作の台本を読ませて頂く前に今回のような話を知っていたんです。スローライフというか、実際に子どもを連れて若い夫婦が地方に移住をするという番組がYouTubeで放送されていたんです。移住先の村を仕切っている人も若いのですが、その若いリーダーたちと彼らは相性が合わなくて「村を出ることになりました。それは私たちが至らなかったからです」という結果になっていました。そのYouTube番組を見た時に、“この話は映画の題材になる”と僕は思ったんです。ちょっと騒めいた記憶がありました。今回の脚本を読んだ時、それを映画のテーマにされていたので、そこに着目した人は他にも居たんだと思いました。凄く現代的でジャストなテーマだと思っています。
若葉 僕はこの映画で描かれている同調圧力みたいなものが凄く気持ち悪かったです。
それはこの業界でもあることですし、それが蔓延していると感じています。自分が思ったこと、好きなことが自由に出来ない、出来なくしている暗黙の了解みたいなものがあって、それをこの映画からも感じました。気味の悪さみたいなものがありました。
――リアルが散りばめられているから気味が悪いのかもしれませんね。この映画はある意味、第二の人生も描いています。お2人が今の時点で「次にやりたいこと」があれば教えてください。
田口 僕は終活です。終活を始めようかと、色々なものを処分していこうと思っています。僕の世代になると「いつから終活始める?」という話題になるんです(笑)。色々なことを整理整頓して、捨てられるものは捨てる。身軽になって、また新しいことを見つけられたらと思っています。
――私の中では、田口トモロヲさんはコレクターというイメージがあります。
田口 そうですね。コレクターです。世代的にDVD、CDはたくさん持っています。でもCDが配信になり、映画を「劇場では観ない」という時代になっていますよね。僕らの世代はミニシアターが中心で、映画を観まくっていたんです。まさかミニシアターが無くなるなんて夢にも思っていませんでした。今はシネコンが主流です。“時代は確実に変わっていく”ということも感じているので、その中で自分に必要ないものはどんどんと捨てていって、捨てる工程の中で何か新しいものを見つけられたらいいですね。でもDVDやCDは捨てられないです(笑)。捨てるのは難しいです。
若葉 具体的ではありませんが、まだ公開はしていないんですが、昨年撮影した作品である種、自分が目標にしていた場所に辿り着いたという感覚を持ったんです。ここから、もう1歩違うステージというか、そういうものを見つけないといけないという意識になっています。ステージというか、意識みたいなものが違う方向に向くといいなという感覚になりました。
――私はお2人にまた監督作品を作っていただきたいです。
田口 あぁ、確かにそうですね(笑)
以前、インタビューで田口トモロヲ監督作品はもちろん、ご本人自体のことも尊敬していると言っていた若葉竜也さん。そんな若葉さんが演じる【輝道】は、トモロヲさん演じる村を仕切る【田久保】に取り込まれていきます。まさに追い詰められた人が選ぶ間違った選択から地獄の釜の蓋を開いたような映画『嗤う蟲』。恐ろしや、恐ろしや、と思いながらも、時折、ニヤけてしまうのでした‥‥。
若葉竜也:ヘアメイク / Hair_ASASHI(ota office)、スタイリング / Toshio Takeda (MILD)
田口トモロヲ:ヘアメイク / 大宝みゆき、スタイリング / DAISY 石橋瑞枝(DAISY M’S OFFICE)
田舎暮らしに憧れるイラストレーターの杏奈は、脱サラした夫・輝道とともに都会を離れ、麻宮村に移住する。麻宮村の村民たちは、自治会長の田久保のことを過剰なまでに信奉していた。2人は、村民たちの度を越えたおせっかいに辟易しながらも新天地でのスローライフを満喫する。そんな生活のなかで杏奈は、麻宮村の村民のなかには田久保を畏怖する者たちがいる、と不信感を抱くようになっていく。一方、輝道は田久保の仕事を手伝うことになり、麻宮村の隠された“掟”を知ってしまう。それでも村八分にされないように、家族のため“掟”に身を捧げることに‥‥。
監督:城定秀夫
出演:深川麻衣、若葉竜也、松浦祐也、片岡礼子、中山功太、杉田かおる、田口トモロヲ
配給:ショウゲート
©2024映画「嗤う蟲」製作委員会
公開中
公式サイト waraumushi