――私は『MIRRORLIAR FILMS』制作発表会見のことを覚えています。山田孝之さんをはじめとする企画メンバーとお話されていた当時を振り返って今、現在をどう感じられていますか。
確かに少しずつ少しずつ形が出来てきたというか、本当に手探りでやっていたので、それから認知もしていただいて、今回は映画制作に企業版ふるさと納税を使っています。色々な自治体から「うちでもやって欲しい」という問い合わせをいただいたり、企業からは「寄付したい」というお話もいただいています。取り組みが認められて来たという実感はあります。
秋田市では、「SEASON5」「SEASON6」の撮影をし、ワークショップを行って学生たちに映画を作ってもらったりもしました。そういう取り組みの中で地元の人たちに刺激を与えることが出来たという実感が凄くあります。ワークショップに参加した学生たちからは懇親会で、「夢が見つかりました」「私はプロデューサーになります」という言葉をもらったりもしました。そう考えると当初、思い描いていた「映画を制作して関係人口を広げて、仲間を増やす」という皆が漠然と思っていたことが「こういう形で叶っていく」という体験を通して実感しているところです。
――プロデューサー、監督(『MIRRORLIAR FILMS Season2』の『point』)、俳優と、阿部さんは仕事をしています。これを踏まえて俳優という仕事は、プロデューサーと監督を体験したことで考え方や見え方など変化はありましたか。
説明するのが非常に難しいのですが、俳優は演じる役のことを誰よりも一番に考えていないといけないと僕は思っています。誰よりも役のことを愛していないといけない。ただその役に対する愛し方、構築の仕方が大筋とズレてしまうと監督の演出やプロデューサーの方向性とズレてしまう、噛み合わなくなってしまうんです。だからそういう意味でいうと、全体を引いて見るという目が凄く培われたと思っています。脚本を読む力もそうだと思いますし、そもそも自分がこの映画でどんな存在でいるべきなのかを凄く引いた目線で前よりも見られている気がします。なおかつ、そこから自分の役についてミクロとマクロではありませんが、ギュッとフォーカスして“狙いはここ”と思った時に正しい方向で役に集中することが出来るようになったと思います。言い換えると、立場にあわせて目線の高さを使い分けて演じられるようになってきたと思っています。
他には責任という点でもそうです。自分が役をいただいても、どういうプロセスで映画が作られて、どんなドラマを作るのかを俳優として参加すると、最初からではなく途中から入ることになるので理解しづらいんです。でも、資金集めや脚本作りなど色々なことを経験し、実感したことで、途中から俳優として参加した場合でも責任感への意識に変化が生まれました。