Sep 26, 2020 interview

仲野太賀が語る、自身が抱く演技論と映画『生きちゃった』での役作り

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石井裕也監督のオリジナル脚本となる『生きちゃった』。幼なじみの関係から結婚した妻と5歳の娘、そして幼なじみの親友という小さな世界でささやかな夢を抱いていた山田厚久が直面する妻の不貞行為。想いを言葉にすることがうまく出来ない男と、言葉を信じてしまう女の掛け違いが運命の歯車を狂わせる・・・。
主人公の厚久を演じたのは、出演作が相次ぐ仲野太賀さん。信頼する石井裕也監督との映画作りはもちろん、多くの監督に呼ばれる仲野太賀さん自身が抱く演技論についてお話しを伺いました。

再生ボタンを押すと仲野太賀さんのトークがお楽しみいただけます


――最初に脚本を読んだ時の感想を教えて下さい。

脚本を読んだ時は石井監督の素直な想いというか、今この時代に対する想いだったり、家族に対する想いが正直に出ている脚本だなって思いました。主人公・山田厚久が抱えている閉塞感や行き詰まりが僕は特殊だとは思えなくって。それは僕自身もそうだし、現代に生きる人達も言いたいことが言えなかったり、本音が言えない気分が漠然とあると思うんです。それを象徴したような役だと思いました。

――“こういう男の人、居るよな”って主人公の厚久を見ていて思いました。“何で、こうゆう時に、大事なことが言えないんだろう”とか、大島優子さん演じる奈津美と同じような経験をしている女性もいる気がします。

そうかもしれないですね。女性が観るのと男性が観るのでは、また違うと思うんですけど、石井監督の中で男性の言葉にしなさ加減に対して凄く実感があるのではないでしょうか。言葉がどんどん軽くなっているような気もするし、それはSNSとかが発達していることもそうですが、一つの言葉でも質量が全然違う、軽くなっている気がします。想えば想うほど、大切にすればするほど、その重みが出しづらくなっているような気がしていますね。

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――仲野太賀さんは想いを喋る方ではないですか?

僕はどちらかと言えば理解して欲しいから、伝えようと努めるタイプです。ただ、本当に思っていることって、“もし、それを言ってしまったら何かが壊れるんじゃないか”って思い、大人になればなるほど、見て見ぬふりをするのが上手になりますよね。言葉にしなくても、ぼやかして事を成立させるのにも慣れて来るし、本音を言って全てが壊れてしまう瞬間があるような気がして、それが現代における閉塞感なのかもしれないですね。昔だったら本音をぶつけて、男と男だったら殴り合うみたいなコミュニケーションの手段があったけど、今はそんなこと決して出来ないし、やっぱり言葉を伝える、想いを伝える手段が変わって来ているのだと思います。

――この作品を観ながらもどかしさを感じました。もしかしたら厚久は頭で思っていることを、ちゃんと正直に伝えようとすればするほど言えなくなってしまうのではないかと思いました。

劇中にも出て来ますが“好きだからこそ言えない”、もしかしたらそれが何かを傷つけるかもしれないと思っている、そういう不器用な優しい男である厚久は、あらゆることを受け入れている気がします。夢を諦めて家族を養う、家庭を持つということも受け入れて、家庭はもしかしたら上手くはいっていないかもしれないけど、愛情表現のひとつとして誠実に働く。家族の為に働くことだけが彼の愛情表現で、そんな彼に悲劇ばかりが起きるじゃないですか。それすらも想いを吐き出すこともなく、押し殺して受け入れる。受け入れることの連続で「生きちゃった」っていうのは受け入れることのような気がします。

これが「生きる」だったらもう少し自分の自覚、覚悟があると思うんです。「生きちゃった」は、自分が抗えない大きな流れの中で生きているっていう自覚があるだけで、それは運命や社会の悲劇を受け入れるだけの人間の言葉のような気がします。僕は思ったことが言えなかったり、口に出来ない男が映画を通して、どんどん人間回帰していく、言葉を取り戻していく話だと思っています。

――映画を観ていくうちに“人間臭いな”って思いました。人は人によって態度が変わりますよね。この映画の厚久も大島優子さん演じる奈津美に対しては受け身、若菜竜也さん演じる武田には受け身ではなく話す、受け身なのは武田の方。つまり芝居も変わるってことですよね。

そこは石井監督も凄く意識されていました。武田には言えるとか、武田と厚久の関係性とかも一つの愛というか。やっぱり人は一人では生きていけないみたいな。

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