Sep 05, 2020 interview

アートという言葉が似合う映画『マロナの幻想的な物語り』で吹替を演じたのんが受けた様々な刺激

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―― 色々なことにチャレンジされていますが、岩井俊二監督がリモートで作られた『8日で死んだ怪獣の12日の物語 −劇場版− 』(公開:2020年)では、実際には存在しないものを、そこに居るかのようにナチュラルに演じていて驚きました。

楽しかったです。斎藤工さんとの掛け合いも凄く面白かったし、初めてご一緒させて頂いたんですけど、鋭い質問とかアドリブでされるので、“えっ?どう返そう”みたいなので、緊張したりもしたのですが、そのやり取りが楽しかったです。

岩井監督も存在自体が、岩井俊二監督作品みたいな空気を纏っている方でした。画面越しのリモートでの演出だったので、舞台挨拶の日まで直接お会いすることはなかったんですけど、画面越しからもその纏う空気感が伝わってきて、その中で皆がその空気を感じながら作っていった雰囲気がありました。それがまた面白かったです(笑)

―― 全てがリモートだんったんですね。ちなみにマロナのアフレコはどうされたのですか?

スタジオでの収録でした。レコーディングの時は、私一人でした。自分の収録前にソランジュ家族皆さんのシーンを見学させて頂きました。

―― マロナの声を担当して気付かされたこととかありますか?

“犬の目線から見るとこうなんだ”って、改めて腑に落ちる部分が沢山ありました。腑に落ちるんだけど驚きがある。普通に捉えていたものが、犬から見るとこんなにも危なっかしいんだとか、不安なんだとか、ビックリしました。“新しいことに挑戦することは、人間にとっては夢だけど言うけど、犬にとっては不安”という台詞があったり、ソランジュがお母さんにきつく言われて散歩するところで、“お嬢ちゃんにはわからないかもしれないけど、犬は散歩に行かないと排泄も出来ない”という台詞とか。知っていたことだけど、マロナの視点で言われるとこんなにも痛いんだと。痛みを感じるマロナにグサッときました。

―― 犬、マロナの人生のテーマは「一途な愛」なんですよね。のんさんが、これまでの人生のテーマを言葉にするなら何と付けますか?

“表現すること”かな。これがなかったら生きていけないと思っているので。マロナとはちょっと違いますね。

―― 表現すること、凄く大変じゃないですか。

大変だと思います。面白いけど(笑)やっていて楽しい瞬間は沢山あるけど、苦労しますよね。

―― 表現したい思いとは裏腹に、“もしかしたら誰かにこう言われちゃうんじゃないか、酷いことを言われたらどうしよう”と思って躊躇してしまう人も多いと思います。そういうことを考えたりしますか?

考えますね。でも作って失敗してしまった時は、“どういうふうに捉えられたんだろう”って考えて、今後に生かそうとします。あと自分は、自信過剰なところがあるので、あんまりへこたれないですね(笑)自分が本当に失言をしてしまった時は、自分が反省するしかないかもしれないですけど。自分が作った表現が周りにウケなくても、自分がやったものは割と気に入っているので怒ったり、ショックを受けたりはしますが、次の日になったら忘れていることが多いです。

―― その時、その時の“発想”を大切にされているんですね。

そうですね。どういうふうに解釈したら、どういうふうに言葉で伝えたら、ちゃんと伝わるんだろうとか凄く考えます。相当恐いことは恐いです、毎回どう思われるんだろうとか。期待で浮かれている時もありますけど(笑)そんなギリギリのところでやっていく仕事だと思っています。そしてそれを全てひっくるめて楽しんでいる感じです。

高校生ぐらいの時に突然、“自分が女優をしていなかったら何をしていたかな?自分には何があるんだろう”って想像したことがあって、思いつかなかったので実家の妹に電話して聞いてみたんです。そしたら妹に“その辺で野垂れ死んでいると思う”って言われたんです。それを聞いた時、自分の中で凄く納得しちゃって(笑)“この道しかない”っていう思いで心を決めて、今まで来ている感じです。それがテーマになっていますね。

のんさん。『マロナの幻想的な物語り』の作風さながらマルチな才能を持つ女優であり、創作あーちすと。インタビューをする際に、いつも感じるのは映画について答える場合、じっくり考えて頭の中に浮かんだ感情を大切にしながら紡ぎ出す“言葉”だということ。今作でも、犬がその時に感じた言葉として、見事なまでに“声”のトーンや大きさ、声色を駆使して、客観的な視点を持つマロナの性格を絶妙に表現しています。カラフルなスクリーンに溶け込む数々のマロナの名言。スクリーンに集中したい感覚に囚われるからこそ、吹替えが適した作品に思えます。

文 / 写真・伊藤さとり

作品情報
『マロナの幻想的な物語り』

血統書付きで差別主義者の父と、混血で元のら犬だけど美しくて博愛主義の母との間に生まれたマロナは、同時に生まれた9匹の末っ子。このハート型の鼻を持つ小さな犬は、生まれてすぐ彼女の家族から引き離され、曲芸師マノーレの手にわたります。幸せな日々が訪れたかに思えましたが……。
『ロング・ウェイ・ノース 地球のてっぺん』のプロデューサーであるロン・ディエンスと、アヌシー国際アニメーション映画祭最高賞受賞歴を誇るアンカ・ダミアン監督のもと、アニメーターが作り上げた映像はまさに動く前衛芸術。自分にとって、ともすると忘れがちな大事なことを、マロナの生涯を通じて再認識させてくれる作品です。
監督: アンカ・ダミアン
キャラクター・デザイン: ブレヒト・エヴェンス
背景美術: ジナ・トーステンセン / サラ・マゼッティ
吹替: マロナ:のん、曲芸師マノーレ:小野友樹、イシュトヴァン:平川新士、ソランジュ(幼少時):原 涼子、ソランジュ(少女、大人):夜道 雪  ほか
配給:リスキット
© Aparte Film, Sacrebleu Productions, Mind’s Meet

9月11日(金)より字幕版、吹替版 公開

公式サイト:https://maronas.info/

伊藤 さとり

映画パーソナリティ
年間500本以上は映画を見る映画コメンテーター。ハリウッドスターから日本の演技派俳優まで、記者会見や舞台挨拶MCも担当。 全国のTSUTAYA店内で流れるwave−C3「シネマmag」DJであり、自身が企画の映画番組、俳優や監督を招いての対談番組を多数持つ。また映画界、スターに詳しいこと、映画を心理的に定評があり、NTV「ZIP!」映画紹介枠、CX「めざまし土曜日」映画紹介枠 に解説で呼ばれることも多々。TOKYO-FM、JFN、TBSラジオの映画コーナー、映画番組特番DJ。雑誌「ブルータス」「Pen」「anan」「AERA」にて映画寄稿日刊スポーツ映画大賞審査員、日本映画プロフェッショナル大賞審査員。心理カウンセリングも学んだことから「ぴあ」などで恋愛心理分析や映画心理テストも作成。著書「2分で距離を知事メル魔法の話術」(ワニブックス)。
伊藤さとり公式HP: https://itosatori.net

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