――初共演でここまでの化学変化を起こせるのは、素直に凄いですね‥‥。
鶴瓶 目の前にいるのはあの原田知世なのに気を遣わずいられるのは、自分でも「なんやこれ」という感覚です。前世で何かあったとしか思えない。
原田 本当に不思議ですよね。
鶴瓶 作って言ってるわけじゃなく、ホンマにそうやから。嫁とは夫婦生活53年になりますが、同じ様な感覚です。今日も自然と「ご飯食べに行こうか」という話になって、予定が合わなくても「じゃあ今度にしよう。いつにする?」と気軽に話せました。我々は重岡大毅と上白石萌音の2人が演じる若き日を引き継ぐわけですが、この2人も抜群に良くて、もうずっと「なんなのこれ?」状態です(笑) 。ここ (上白石→原田) も「本当にこうなるんちゃうか」と思えるほど雰囲気が近いですし、うまいこと選んだなぁと感心しました。


――鶴瓶さんが重岡さんの寿司を握るシーンの練習を激励されているメイキング映像を拝見しましたが、お話を伺う限り「重岡さん・上白石さんとこういう連係を取った」ではなく自然と‥‥という流れですよね。
原田 そうなんです。本読み (撮影前に行う台本の読み合わせ) の際にご挨拶したくらいで、監督からも「こういう風にすり合わせましょう」というような指示はなく、自由にやってくださいという形でした。ただ、覚えているのは西畑家のシーンのセット撮影時での出来事です。先に若いお2人の過去シーンを撮った後で模様替えをして、私たちの現在パートの撮影に臨んだのですが、セットの片隅に重岡さんと上白石さんが演じられた昔の想い出の写真が飾られていました。その中に映っているお2人の表情がとっても素晴らしくて、実際に動いているところはまだ見られていなくとも、保さんと皎子さんがここで送ってきた生活を想像できました。胸が熱くなりましたし、自分たちが演じていくなかで道しるべをもらった気がしました。
鶴瓶 あれはホンマにいい写真やったなあ。
原田 雰囲気がとても伝わってきましたよね。あのときあの写真を見られたことが、とても頼りになりました。

取材・文 / SYO
撮影/藤本礼奈

西畑保、65歳。文字の読み書きができない。そんな彼の側にはいつも最愛の妻・皎子がいた。どんな時も寄り添い支えてくれた皎子へ感謝のラブレターを書きたい。定年退職を機に保は一大決心し夜間中学に通い始める。気付けば5年以上の月日が経過した頃、一字また一字と書いては消しまた書くひたむきな保と、それを見るともなく見守る皎子は結婚35年目を迎えていた。変わらない日常がいつまでも続くと思っていた。なかなか書き上げられずにいたラブレターがようやく形になろうとしていた頃、皎子が病魔におかされて‥‥。
監督・脚本: 塚本連平
出演:笑福亭鶴瓶、原田知世、重岡大毅、上白石萌音、徳永えり、ぎぃ子、辻󠄀本祐樹、本多力、江口のりこ、瀬戸琴楓、白鳥晴都、くわばたりえ、笹野高史、安田顕
配給: 東映
© 2025「35年目のラブレター」製作委員会
公開中
公式サイト 35th-loveletter