――ある種の瞬発力が必要になる一方、今回でいうと長年連れ添った夫婦の空気感を感じさせないといけないわけですよね。
鶴瓶 原田さんとは初共演でしたが、ご本人は色々考えてんねんやろうけど、こんなに空気感が自然な人はいないなと感じました。それは画 (え) にもしっかり出ていると思います。
――原田さんは先のイベントで「鶴瓶さんのそばで見て感じること。それだけでいいのかなと思えた」と仰っていましたね。
原田 これは感覚的なものなので説明が難しいのですが、役作りのため、距離を縮めるために他の会話をしたり、何かアクションを起こさなくても大丈夫、と自然に思えました。鶴瓶さんとの初日は市役所のシーンでしたが、鶴瓶さん演じる保さんの隣にいるとすごく安心できたんです。普段だったら初日はとても緊張してしまうものなのですが、なぜか素の自分でいられてここまでリラックスできていることに自分でも驚きました。こういった感覚を持ちながら保さんを見つめていった先に皎子さんが自分の中に降りてくるんだろうし、きっとこうした一つひとつのシーンの積み重ねの中で2人の空気感が生まれてきて、何でもない日常の時間が大切な想い出になるんだな、と思えました。



鶴瓶 朝、保が家を出て仕事に行くシーンを撮ったとき、ホンマに一緒に生活しているみたいでした。原田さん演じる皎子さんが見送ってはるんやけども、すごくいい空気感がもう既に生まれていたし、家の雰囲気も良くてずっとこの家に住んできたような感覚にもなりました。「こう思おう」としなくても、もう夫婦になっていた気がします。(意識して夫婦っぽさを)作らんでええんやな、と思えました。
原田 保さんが目覚めて皎子さんの寝顔を見て安心して出かけて、そうしたら皎子さんも外に出てきて、彼が見えなくなるまで見送る――冒頭のシーンだけで「きっと雨の日も風の日も、何十年もなされてきたんだろうな」と2人のこれまでを想像できてしまうのがすごいですよね。とても素敵で、大好きなオープニングでした。
鶴瓶 原田さんがそういった雰囲気を作ってくれたから、こうやって会えるたびにホンマに嬉しくなるんです。
原田 撮影期間は1ヶ月くらいなのに、鶴瓶さんとはもっと長い時間一緒にいたような気がします。不思議ですね。
鶴瓶 この感覚は何なんやろうね。顔合わせで1回会ったときからもういけるいう感じやったし、あんまないことなんです。やっぱし気を遣うものですし。でもそれを飛び越えて、こういう間柄になれました。
原田 撮影期間中、撮り直しもほとんどありませんでした。監督が「大丈夫です!」と必ず言って下さるので、信じてついていくだけでした。



