Mar 07, 2025 interview

笑福亭鶴瓶 & 原田知世インタビュー 初共演で長年連れ添った夫婦の空気感を自然と醸し出した2人 『35年目のラブレター』 

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ある夫婦の奇跡的な、そして愛情にあふれた実話を映画化した『35年目のラブレター』が、3月7日に劇場公開を迎えた。戦時中に山村の貧しい一家に生まれて十分な教育をうけることができず、文字の読み書きができないまま大人になった西畑保と、彼の“手”となって共に歩み続けた最愛の妻・皎子(きょうこ)。定年退職を機に「妻にラブレターを書きたい」と一念発起して夜間中学に通い始める保とその妻・皎子を笑福亭鶴瓶と原田知世が、2人の若き日を重岡大毅と上白石萌音がそれぞれ演じた。

初共演でありながら、長年連れ添った夫婦のような空気感が自然に生まれたという笑福亭鶴瓶と原田知世。「大好きな作品」と口をそろえる2人に、その想いを聞いた。

――2月3日に行われたお披露目試写会の場で鶴瓶さんが「出られてよかったなと、自分でもほんまに思う」、原田さんが「自分が出ているにも関わらず、この作品が大好きだなと思えた」と仰っていたと伺いました。脚本段階で素敵なお話だったかと思いますが、完成版をご覧になって、どの部分がよりパワーアップされたと感じましたか。

原田 脚本自体も素晴らしく、スッと読めて泣けてきてしまい「なんていい脚本なんだろう」と感じたのが第一印象でした。そこから映像化にあたって、それぞれの役者さんの演技や様々な演出が加わってより豊かになりましたが、私が印象に残ったのは後半の演出です。若き日と現在の保さんと皎子さんの4人が並んで座っているシーンがあるのですが、脚本の段階ではまだあの形ではなく「声だけで登場するのかな、あるいはカットを割って現在パートと過去パートを並べるのかな」と思っていました。監督ご自身が脚本を書かれているため、現場の様子を見ながらどんどん要素が足されたり絞られていき、作品自体が一緒に育っていく過程を見せていただいた気がしています。

鶴瓶 監督は脚本を書いて撮って、全部やれて楽しいやろうなあと思います。上がり(完成版)も素晴らしかったですし、楽しんで作っている感じが伝わってきました。監督に「満足したでしょ?」と聞いたら「はい、しました」と言うてはって、ああよかったなぁと。監督が完璧に書いて計画したものを自分らがちゃんとできてなかったらどうしようと思っていたんですが、上がりがあんまり良いもんだから安心して聞けました。僕は基本、脚本を読んでから出演を決めるのではなく「俺より俺のことを分かっているマネージャー陣を信じれば間違いない」と一任しています。それに芝居は相手があってのことですし、自分だけ「こうしよう、ああしよう」と固めてしまってもしゃあないから、フラットな状態で臨んだ方がスッと役や作品に入れる気がしていて。だから作品に入ってから改めて「すごくええ脚本やなあ」とじんわり感じたことを覚えています。

――鶴瓶さんは以前からそのスタンスで臨まれていたのでしょうか。

鶴瓶 そうですね。『ディア・ドクター』(2009)のときも脚本を読み込みすぎないようにして現場に入りました。自分はやっぱり現場の空気感が大事やと思うんです。いかに仲良くなって一緒の方向を向けるかが大切やから、最初の方はカットがかかったら「監督、いまのどうやった?」と聞きに行っていました。

――『ディア・ドクター』の西川美和監督も『35年目のラブレター』の塚本連平監督と同じく、ご自身で脚本も書かれる方ですね。

鶴瓶 それもあって、監督本人の中で固まっている部分も多いでしょうから、こっちが決め込まずに行った方が現場で柔軟に対応できるやろうなとは思っています。