ブランドと音楽、映画との繋がり
ヴィヴィアンを語る上で外せないのが1970年中盤に起こったロンドンのパンクムーブメントである。彼女が初めて立ち上げたブランド「レット・イット・ロック」の衣装でデビューを飾ったセックス・ピストルズは、鋲を打った革ジャンや引き裂かれたTシャツに安全ピン、SM風のパンツなど過激なファッションが世間を騒がせパンクロックムーブメントを巻き起こした。
もうひとつ一大ブームとなった出来事がある。それは映画『セックス・アンド・ザ・シティ』(08年)でサラ・ジェシカ・パーカー扮する主人公のキャリーがヴィヴィアンデザインのウエディングドレスを着用し、その膝丈バージョンを作って公式サイトでネット販売したところ一瞬で完売という記録を作ったことだ。さらにディズニー映画『ザ・マペッツ2/ワールド・ツアー』(14年)ではミス・ピギーというキャラクターが着るウェディングドレスドレスのデザインを担当したり、『荒野の用心棒』(64年)や『夕陽のガンマン』(65年)で一躍人気を博したクリント・イーストウッドをテーマにしたコレクションも発表している。日本では人気漫画を実写化した映画『NANA』(05年)で中島美嘉演じるナナが愛するファッションがヴィヴィアン・ウエストウッドの洋服だったことから一躍有名ブランドとなった。このように彼女はファッション業界だけではなく、映画業界や映画ファンにも多大な影響を与えたのだ。
有名デザイナーが衣装提供・協力した映画といえば、モデルやファッション業界の裏側を描いた『ネオン・デーモン』(16年)がある。こだわりの強いニコラス・ウィンディング・レフン監督の「偽物ではなく、既成概念の枠を超えた高級ファッションの舞台を作り上げたい」という意向により、エンポリオ・アルマーニ、サンローラン、レディー・ガガも愛用するMarina Hoermanseder、COACH、サルヴァトーレ・フェラガモ、そしてもちろんヴィヴィアン・ウエストウッドの衣装も登場する。また、忙しいセレブのために代行して買い物をする“パーソナル・ショッパー”として働く女性が主人公の『パーソナル・ショッパー』(16年)ではシャネルが衣装協力し、カルティエやクリスチャン・ルブタンなど最先端のブランドショップが続々と登場して話題になった。