業界のプロフェッショナルに、様々な視点でエンターテインメント分野の話を語っていただく本企画。日本のゲーム・エンターテインメント黎明期から活躍し現在も最前線で業務に携わる、エンタメ・ストラテジストの内海州史が、ゲーム業界を中心とする、デジタル・エンターテインメント業界の歴史を語ります。
私がソニー株式会社に入社したのが1986年。すでに34年の月日が流れたことになります。
幸運なことに、私はその間にプレイステーションビジネスの立ち上げに深くかかわり、そのライバルとなるドリームキャストの立ち上げ、数少ない日本発のディズニーIPで成功を遂げたタイトルの開発、マイクロソフトのパートナー開発会社としての商品提供、PCやモバイルのオンラインゲームやソーシャルゲームの創成期に立ち会うなど、様々な国内外のエンタテインメント会社のプロデューサーやマネジメントを経験し、ゲーム業界の大きな変遷期に様々な角度で参加してきました。
そこで私が関わってきたエピソードを中心に業界の歴史をみなさんにお届けしていきたいと思います。
すでに日本全国の非常事態宣言が解除されたとはいえ、現在も世界規模で続く新型コロナウイルス騒動でこの先どうなるかはまだ読めませんが、2020年はゲーム業界としては、周期的におきる大戦争の始まる大きな節目の年になるはずです。具体的には昨日とうとう本体デザインとゲームのラインナップが発表されたソニーのプレイステーション5 (PS5)とマイクロソフトのXBOX Series Xという2つの新たなプラットフォームがローンチする年になるのです。
新型コロナウイルス騒動がなければ、今の時期は、GDC (Game Developers Conference / サンフランシスコで例年3月に開催、今年は延期が決定)やE3(ロスアンジェルスで5月もしくは6月開催、同じく延期が決定)で、プラットフォーム企業のソニーやマイクロソフト、また有力サードパーティも新作や新しい戦略の発表など情報戦、広報合戦を繰り広げているはずですが、今回はいささかトーンダウンの状況です。
そしてGoogleやAmazonがストリーミングとクラウド技術を使い、本格的なゲームプラットフォーマーとして参入し、AppleのiPhoneやGoogleのアンドロイド端末などのスマートフォンでもモバイルゲームのサブスクリプションモデルの展開がはじまっています。また5Gのスタートにあわせて新しいサービスが提供されたり、VRやARがようやくこなれてくるなど、ゲーム業界の大転換期、新たなゲームの始まる年のはずなのです。
そのような新たなゲーム史のページが始まるまさにその直前、まずは今年発売25周年を迎えるプレイステーションのローンチ時のエピソードをご紹介していきたいと思います。