「密室空間での監視」というモチーフ
かつて我々は、『アンブレイカブル』(2000)、『スプリット』(2017)、『ミスター・ガラス』(2019)と続くシャマラン・ユニバースを(途中まではそうと知らずに)目撃している。それと同じような緩やかな繋がりが、『トラップ』にも隠されている。イシャナ・ナイト・シャマランが長編監督デビューを果たした『ザ・ウォッチャーズ』(2024)のポスターが、何気なく映し出されているのだ。まるでイースターエッグのような、父親から娘への目配せ。
『トラップ』と『ザ・ウォッチャーズ』は同時期に作られた作品だが、不思議な共通項もある。『ザ・ウォッチャーズ』は、地図にない森に迷い込んだ主人公が、やがてガラス張りの一軒家に閉じ込められ、謎の“何か”によって監視される物語。『トラップ』もまた、主人公がライブ会場に閉じ込められて、FBIに監視される物語だ。
密室空間での監視というモチーフは、劇場での映画体験そのもの。奇しくも父と娘は、映画を鑑賞する喜びを、興奮を、楽しさを、分かりやすいかたちで寓話化している。しかも、『ザ・ウォッチャーズ』には「決して破ってはいけない3つのルール」が劇中で提示されるのだが、これがほとんど「シャマラン映画を鑑賞する際の観客の心構え」なのだ。
①決して部屋を出てはいけない
②“恐怖”に背を向けてはいけない
③常に画面の前にいろ
もはや『トラップ』と『ザ・ウォッチャーズ』は、シャマラン・ユニバース “フェーズ2”と呼んで差し支えないのではないか。もちろんこれは筆者個人の妄想の域を過ぎないが、もはやシャマラン・ユニバースとは単なる物語の連続性を指すものではなく、シャマラン・スピリットを宿した、シャマラン・ファミリーによる、シャマラン・スリラーへの呼称のような気がしてくる。
純粋なサスペンス映画としての面白さに満ちた『トラップ』。ひょっとしたら我々は、今からM.ナイト・シャマランの最盛期を見届けることができるのかもしれない。
文 / 竹島ルイ
世界的アーティストのアリーナライブを溺愛する娘と楽しむ家族思いの父親は、サイコな切り裂き魔だった。会場を囲む異常な数の監視カメラと300人の警官。3万人の観客を収容するライブは、彼を捕まえるため仕組まれた前代未聞の”罠(トラップ)”!トラップに隠された衝撃の真実を見破れるか。予測不能の騙し合いサスペンス。
監督:M.ナイト・シャマラン
出演:ジョシュ・ハートネット、アリエル・ドノヒュー、サレカ・シャマラン、ヘイリー・ミルズ、アリソン・ピル
配給:ワーナー ブラザース映画
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公式サイト trap-movie