Feb 03, 2026 column

「あなたとひとつになりたい?」ホラーで描いたラブストーリー 映画『トゥギャザー』

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愛は気持ち悪い?

本作『トゥギャザー』は愛をテーマにしたホラーだ。だが愛を描いたホラーなのか、怪奇で描いたラブストーリーなのか、観るものによって判断が別れると思う。

ティムとミリーの肉体がくっついて、その一部を剥がすときに痛みを伴う。いわゆる引き裂かれる痛みであり、同時に初体験の痛み、愛(エロス)のメタファーだ。「交わり」と「目合い(まぐあい)」という日本語がある。ともに性行為を表す言葉だが、「目合い」は、互いの目を見ることから由来し、契りを結ぶことを意味する。彼らはただ交わるだけなのか?

心と肉体が一致しない。しばしば愛情表現や官能表現で用いられがちな言葉で、そんな感覚に陥ったことがある人もいるだろう。しかしながら、本作以上に身を引き裂かれる痛みを感じることはないはずだ。

近年、アカデミー賞、ゴールデングローブ賞、カンヌ国際映画祭などの賞レースで話題をさらった『サブスタンス』をはじめ『TITANE/チタン』などボディー・ホラーが再び注目を集めている。これについて、シャンクス監督はこう述べている。

「私がなぜボディー・ホラーに惹かれるのかというと、“自分の内面を救う物語”だからだ。例えばスラッシャーものなどは外に敵がいるので、襲ってくるジェイソンやモンスターから逃げることができますが、ボディー・ホラーは自分の体内の問題だから、逃げられないという怖さがあります。誰でも大きな病気になったり、ウイルスが体内に入ってきたりすることに恐怖心があると思います。自分が肉体の変容を求めることもあれば、肉体に裏切られることもある。私たちは自分の肉体とどう付き合っていったらいいのかというのは永遠の問題です」とボディー・ホラーを世の根底にあるものだと定義している。他者と引かれ合うが異物が肉体に入るという恐怖は拭えないのだ。

前出の通り、本作ではセリフはラブストーリー、スクリーンはホラーという描かれ方をしている。ある意味、愛情表現というものは、カップル当人同士以外には、気持ち悪いものに映っているという皮肉なのかもしれない。

シャンクス監督がパートナーとの関係性から紡いだ本作。物語の主人公である、ミリー役のアリソン・ブリーとティム役のデイヴ・フランコは、実生活でもパートナーだ。『トゥギャザー』は、監督、演者が大切な人を想い作り上げたホラー作品である。もしあなたに想い人がいるなら、物申す恋愛系インフルエンサーの動画を流すより本作を観た方が、自分も相手も理解が深まるかもしれない。なによりホラーファンをはじめ多くの方々に広く観てもらいたいのだ。悪趣味と思われるかもしれないが、ぜひ”パートナー”との鑑賞をオススメする。



文 / 小倉靖史

作品情報
映画『トゥギャザー』

長年連れ添ってきたミュージシャン志望のティムと小学校教師のミリーは、住み慣れた都会を離れ、田舎の一軒家に移り住む。ところが森で道に迷い、不気味な地下洞窟で一夜を過ごした直後から、ふたりの穏やかな日常が暗転する。ティムは突然意識が混濁し、身体が勝手に暴走する奇妙な症状に悩まされ、気持ちがすれ違いがちだったミリーとの関係が危うく揺らぎ出す。やがて、その異変はミリーの身にも勃発。目に見えない磁力に引き寄せられるかのように互いを求め合うその想像を絶する現象は、ふたりが一緒に育んできた愛と人生すべてを侵蝕していくのだった‥‥。

監督・脚本:マイケル・シャンクス 

出演:アリソン・ブリー、デイヴ・フランコ

© 2025 Project Foxtrot, LLC

配給:キノフィルムズ

2026年2月6日(金) TOHOシネマズ 日比谷他ロードショー

公式サイト together-movie