都市伝説系ホラームービー
わかりやすいといった一方で、作品の中に多く散りばめられた、いわば都市伝説的な要素を知らない、興味がないと、理解が難しいかも知れない。
映画をより理解するための都市伝説をここに残しておきたい。
森について
人を寄せ付けない森深くには、未開の集落があると噂されている。たとえば富士の樹海。迷い込んだ人々が集まり、ときにはカルト教団、カニバリズム的な集団を結成されているのではないかと言われている。
鳥について
世界各国の神話から、人を導くもの、神の化身とされている。鳩の帰巣本能を利用した伝書鳩は、しばしば海難事故や遭難で戻るべき道の方向を知るために利用された。
神・悪魔・妖精について
人智を超えた存在。多くは宙に浮き、翼を持った姿で描かれる。人類の前に地球にいた者ともされている。これらは同一視されることもあり、実は古代の地球に降り立った宇宙人だったのではないか?とも言われている。
地底人について
現代人の前に、地球上で繁栄していた存在が核戦争の末、地上を追われ地下生活を余儀なくされたと言われている。
その根拠として、トルコの世界遺産カッパドキアの地下都市などが挙げられている。またナチスドイツは、幻の地底王国の技術力を求め、熱心に南極大陸を探索したとも言われている。
巨人について
神・悪魔・妖精同様に、古代から世界各国の神話に登場する巨大な人間。その足跡、人骨と呼ばれるものが、しばしば発見されるが、都市伝説の域をでない。近年、ピラミッドの建設が現代技術でも不可能なこと、奈良・富雄丸山古墳で出土された長さ2.37メートル、幅6センチの蛇行剣の存在が、巨人の存在を示唆しているのでは?とも言われている。
ドッペルゲンガーについて
自分自身と全く同じ姿をした者がもうひとり存在しているというもので、二重に歩む者を意味するドイツ語に由来する。自分のドッペルゲンガーに出会うと死ぬとも言われており、実際にアメリカ合衆国第16代大統領、エイブラハム・リンカーン、小説家・芥川龍之介が自身のドッペルゲンガーを見たと言う記録も残されている。
都市伝説のように、真実かどうかわからないものは、人々の興味を引くし、また恐怖のきっかけにもなる。
未知へのモノへの不安と気持ち悪さ
『ザ・ウォッチャーズ』には、いわゆる眉唾的な要素だけでなく、現代社会に当てはめてわかりやすく気持ち悪い描写がある。
主人公が逃げ込んだ小屋は、夜になるとガラスがマジックミラーとなり、内側からは己の姿しか見えないが、確かに外からの物音、衝撃音で”何か”が近くにいることがわかる。
それに緊張した面持ちで直立不動になる彼らだが、部屋のテレビには、恋愛リアリティショーが流れ、鳥かごに入ったオウムが「死なないで」と言葉を発する。
ペットを飼う、リアリティーショーを観るといった行為は、現代人にとってなんら特別視されないこと。だが、わかりやすく映像にされると、ものすごく気持ち悪い。
もっというと、リアリティーショーの登場人物が「The Show Must Go On」と言う。幕が上がったらショーを続けなければならない。日本では炎上したこの言葉は、観られているものたちに生まれた奇妙な使命感、連帯感が生まれていく様を如実に表していると思う。それと同時に、スクリーンの外側にいる我々への問いかけのようで、整理のつかない気持ち悪さが襲ってくる。
世の中には観られて気分が高まる、興奮する人もいるが、得体の知れない何かがいるのでは?という想像は、映画のみならず根源的な恐怖だろう。
本編は一見、80分あたりで終わりを迎えるように思えるが、そこからさらに25分間、父親よろしく、観客を翻弄するようなどんでん返しが続く。多くはふれないが、ラストのワンカットまで仕掛けがあるので、最後まで観てほしい。