May 15, 2025 column

「何かを言わずにいられない」と女性たちが語り合った ! デミ・ムーアが覚悟を決めて臨んだ衝撃作 映画『サブスタンス』

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「誰かの物差しではなく、自分で自分の価値を知ることが大切」

関口 本作は、精神的かつ肉体的に追い込まれていくサスペンスフルなホラーですが、ルッキズムの問題や男性主導のハリウッドの在り方などを、巧みに皮肉っている作品でもあります。ショービズ界はそんな状況を変えていけると思いますか? 

町田 映画を観る前は、ジェンダー差別や年齢差別を扱った女性向けのエンパワーメント映画なのかと思っていたのですが、むしろ、女性を固定観念で見てきた人は誰でも、感じるところの多い作品だと思いました。デミは数々の受賞スピーチで、他人の評価で自分を追い込んでいたことを振り返って、「誰かの物差しではなく、自分で自分の価値を知ることが大切」と語っていました。業界全体が変わるには時間がかかるかもしれませんが、ショービズ界に身を置く一人ひとりには、世代を超えて響くメッセージだった気がします。

金田 ボディホラー (肉体の破壊や変容によって抱かせる恐怖)とか、コメディとか、ひとつの言葉でくくれるような単純な作品ではなくて、いまだに若さやルッキズムを重視するハリウッドやエンタメ業界に対する強烈な批判が根底にあると思います。今年のアカデミー賞主演女優賞は下馬評が高かったデミではなくて、若くてキャリアも浅いマイキー・マディソン( 『ANORA アノーラ』)が受賞したのを見て、「ああ、『サブスタンス』が描いてる通りじゃん」と思っちゃった。あ、マイキーが素晴らしかったことに異論はないですけど。でもやっぱりデミに取ってほしかったな。

関口 デミは、本作でゴールデングローブ賞、放送批評家協会賞 (クリティクス・チョイス・アワード)、全米映画俳優組合賞などを受賞しましたが、アカデミー賞は取っていませんものね。あるインタビューで、「CM中、直感的に自分は受賞しないことが分かったから結果に落胆することはなかった」と言っていたのを、ちょっと意味深に感じてしまった。

石橋 アカデミー賞で受賞するタイプの作品ではないと分かっていながら、ほとんど無視されてしまったことには、やはり私も残念な気持ちです。でも、数年前の#OscarsSoWhite (俳優部門のノミネートがすべて白人であったことへの批判を表明するハッシュタグ) のムーブメントをきっかけにハリウッド映画やアメリカの広告全体のキャスティングが変わってきたことを考えると、このような作品が一石を投じることの積み重ねは大事かなと思います。いつか50代以上の女性が主人公のディズニー作品なんかが作られることも期待したいです(笑) 。

文・構成 / 関口裕子

作品情報
映画『サブスタンス』

50歳の誕生日を迎えた元人気女優のエリザベスは、容姿の衰えから仕事が減少し、ある再生医療“サブスタンス”に手を出す。だが治療薬を注射するやいなや、エリザベスの上位互換体“スーが、エリザベスの背を破って現れる。若さと美貌に加え、エリザベスの経験を武器に、たちまちスターダムを駆け上がっていくスー。だが、一つの心をシェアするふたりには「一週間ごとに入れ替わらなければならない」という絶対的なルールがあった。しかし、スーが次第にルールを破りはじめてしまい‥‥。

監督・脚本:コラリー・ファルジャ

出演:デミ・ムーア、マーガレット・クアリー、デニス・クエイド

配給:ギャガ

©The Match Factory

2025年5月16日(金) 公開

公式サイト gaga.ne.jp/substance/