コラリー・ファルジャ監督がヨーロッパの出身だったから描けたこと
関口 確かに。私は町田さんが緊急国際会議で、「コラリー・ファルジャ監督がヨーロッパの出身だったから描けたのでは」と言っていたのも印象的でした。「リベラルに見えて実はそうでもないところもあるハリウッドでは作りづらい」かもと。
町田 舞台裏映像が本編と同じぐらい面白くて、すっかりファルジャのファンになりました。フランスらしいというのか、遊び心満載でおしゃれで、皆で作る文化祭のようなプロダクションの雰囲気に、自分もあの輪に入りたい!と。辛辣な社会派メッセージとグロテスクな描写の連続なのに、スタイリッシュに感じられるのは、ファルジャのセンスなのでしょうね。
石橋 作品全体にスタンリー・キューブリックやブライアン・デ・パルマ、デイヴィッド・リンチらへのオマージュがふんだんに盛り込まれていたところも、この作品のエンタメ性を上げたと思います。ハリウッドを描いているのに、色調や空気感がハリウッドっぽくなく、やはりヨーロッパっぽいですよね。冷たく無機質なところにはホラー色をより強く感じました。あと、ディテールが凝っていて、傷口が縫われている特殊メイクなどは、実際にはあり得ない“SF”なのにリアルに感じられるという不思議な感覚を味わいました。
金田 メイキング映像、本当に面白かったですね。CGではなく徹底的に実写にこだわってるのがよくわかる。もちろん本物の体を使っているわけじゃないですけど、CGじゃないからこそ映像が生々しくて、見ていて痛みさえ感じる。隣のお兄さんは正しく反応していたわけです(笑)。いろんな映画作品へのオマージュ、特にキューブリックの『2001年宇宙の旅』『時計じかけのオレンジ』『シャイニング』へのオマージュがファンとしてはワクワクしたし、そこにどういう意味が込められてるんだろう、と考えたり。でもこの映画はやっぱり、宣伝コピーにも使われている「阿鼻叫喚」という言葉がいちばんしっくりきます(笑)。
関口 阿鼻叫喚(笑)! 作品の中の描かれ方で「これはないだろっ(笑)」と感じた部分は?
石橋 家の廊下が長い(笑)!バスルームが寒そう(笑)!こういう部分は意図したのかどうか不明ですが、観客のイライラを募らせるサブリミナル効果になっている気がします。毎回汚くなっていく部屋は結局誰が片付けるんだろう‥‥とか、ストーリーと無関係な部分でツッコミどころ満載なので、座談会したくなるはずですよね。派手に怒りながら料理をしているシーンでは爆笑しました。
関口 オスカー女優であるエリザベスが、なぜエクササイズの番組を担当しているのかも謎ですよね。ジェーン・フォンダあたりがモデルなんですかね?
