新海誠監督の新作アニメ『天気の子』が現在公開中だ。前作『君の名は。』(16年)の記録的大ヒットを受け、さらに幅広い層が楽しめるエンタメ作品となっている。『天気の子』の見どころ、そして『君の名は。』のメガヒットによって新海ワールドはこれまでと変わったのかどうかをチェックしてみよう。
美しい風景そのものがテーマに
世界興収3億5800万ドルという日本映画最大のヒット作となった新海誠監督の『君の名は。』。その新海監督の3年ぶりの新作『天気の子』の劇場公開が7月19日よりスタートした。公開直後の3日間だけで興収16.4億円という絶好調な出足となっている。かつては“マイナーポエット”と称され、一部のファンから熱烈に支持されてきた新海監督だが、『君の名は。』が社会現象と呼ばれるほどの世界的大ヒットとなり、置かれた状況は否応なく大きく変わった。新作『天気の子』のこれまでの新海作品から変わった部分、変わらない部分について触れてみたい。
時間軸に誤差のある『君の名は。』と違って、『天気の子』のストーリーは極めてシンプルだ。田舎での生活に息苦しさを感じていた高校生の帆高(声:醍醐虎汰朗)は、東京へと家出する。怪しい編集プロダクションを経営する須賀(声:小栗旬)の事務所で住む込みライターとして働き始めた帆高は、ハンバーガーショップでアルバイトしていた女の子・陽菜(声:森七菜)と知り合う。
陽菜は限られた時間と場所だけだが、雨を降りやませる“晴れ女”としての不思議な力を持っていた。両親のいない陽菜と小学生の弟・凪(声:吉柳咲良)の生活費を稼ぐため、帆高たちは“お天気お届け”サービスを始める。連日の雨続きの東京で、このサービスは大変な人気を呼ぶことに。
主人公たちの心情を象徴したかのような美しい風景が、新海作品は大きな特徴となってきた。今回は美しい風景そのものがテーマとなっている。重く暗い雲に覆われていた街に、陽菜が祈ると眩しい日差しが差し込み、街も人々の表情も明るく変わっていく。ビルの屋上から眺める花火大会もとても美しい。風景と主人公たちとの心情がぴたりとマッチする。これぞ新海ワールドだろう。