“作家”“夫婦”を描いた数々の名作、それぞれの魅力とは?
本作は2003年に出版されたメグ・ウォリッツァーの小説「The Wife」が原作のフィクション映画だが、作家を主人公としたフィクション映画はこれまでにジャック・ニコルソン演じる偏屈なロマンス小説家とヘレン・ハント演じるウェイトレスの恋愛を描いた『恋愛小説家』(97年)や、雪山で事故に遭遇したベストセラー作家が熱狂的なファンに監禁される恐怖を描いた『ミザリー』(90年)、ジョニー・デップ演じるスランプに陥った人気作家が身に覚えのない盗作疑惑によって追いつめられていく『シークレット ウィンドウ』(04年)などがある。これらは主人公が“作家”であることを最大限に活かした極上のエンタメ作品であり、いまなお時代を超えて多くの人に愛されている。
また、実在する作家の人生を映画化したものも多く作られており、ピーターラビットの生みの親として知られるイギリスの絵本作家ビアトリクス・ポターの伝記映画『ミス・ポター』(06年)や、エル・ファニング演じるメアリー・シェリーがゴシック小説「フランケンシュタイン」を生み出すまでの波乱の人生を描いた『メアリーの総て』(17年)、「ライ麦畑でつかまえて」で知られる小説家J.D.サリンジャーが名声を得たのちに表舞台から姿を消した謎に迫る『ライ麦畑の反逆児/ひとりぼっちのサリンジャー』(17年)などがある。こういった作品は名作の誕生秘話だけでなく作家が抱える心の闇や壮絶な人生を歩んだ事実など、フィクションとは違い実際に起きたことを描いているところが魅力と言える。ちなみに日本では蜷川実花がメガホンを執り太宰治を小栗旬が演じる『人間失格』が今年公開というニュースが飛び込み大きな話題となった。
『天才作家の妻 -40年目の真実-』では、40年間連れ添った夫に対して心の奥底に秘めた不満や怒りを妻が露にしていくが、壊れゆく夫婦を描いた映画と言えば、過去の愛し合っていた頃と現在の壊れかけた関係が交互に展開する手法を用いた『ブルーバレンタイン』(10年)がトラウマとなった人も多いだろう。また、ある日突然、妻が夫にキレて姿を消すサスペンススリラー『ゴーン・ガール』(14年)や、夫や子供に対する深い愛情をうまくコントロールできない妻が徐々に精神不安定になっていく様を描いた『こわれゆく女』(74年)など、様々な“夫婦映画”がある。二人にしかわからない秘密を共有していたり、一番近くにいても相手の抱えている問題が全くわかってなかったりするのだなと改めて気付けるのが、夫婦を描いた作品の面白いところではないだろうか。