Nov 24, 2019 column

中東が舞台の映画、オスカーにも高確率で候補入り!近年の中東映画の魅力

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日本でも話題を集めた中東映画

『テルアビブ・オン・ファイア』がヴェネツィアで受賞したように、ここ数年、中東映画の評価が世界的に高まっている感がある。アカデミー賞外国語映画賞(2020年からは“国際長編映画賞”に改名)ノミネートでも、2018年はレバノンの『存在のない子供たち』、2017年は同じくレバノンの『判決、ふたつの希望』、2016年はイランの『セールスマン』、2015年はヨルダンの『ディーブ』、さらに遡ると2013年はパレスチナ、2011年はイランとイスラエル、2007~2009年はイスラエル、2005年はパレスチナと、過去14年のうち中東地域の作品が11回でノミネート入りという高確率。映画賞や映画祭で高く評価されやすい、社会性、政治性が強い作品が多いとはいえ、映画としての完成度が国境を超えてアピールしているのだ。

『判決、ふたつの希望』(Blu-ray&DVD 発売中) © 2017 TESSALIT PRODUCTIONS–ROUGE INTERNATIONAL–EZEKIEL FILMS–SCOPE PICTURES–DOURI FILMS

たとえば2017年の『判決、ふたつの希望』は、日本でも小規模公開ながらロングランを記録した。イスラエルの隣国レバノンで、キリスト教徒のレバノン人と、パレスチナ難民が、家の修理を巡って裁判に発展する物語。宗教や政治が複雑に絡むパレスチナ難民の問題を扱い、主人公たちが人間同士として歩み寄ろうとする姿が心を鷲掴みにする。社会情勢をバックにした、中東ならではのヒューマンドラマの珠玉作だ。

このようにパレスチナ問題を描いた映画に傑作が多いのは事実。2005年、アカデミー賞ではノミネートにとどまったものの、ゴールデングローブ賞外国語映画賞に輝いた『パラダイス・ナウ』は、自爆攻撃に向かうパレスチナの若者たちが主人公。公開当時、イスラエル側から大きな反発も起こった問題作でもあり、10年以上経ったいまも変わらないパレスチナの状況に改めて背筋が寒くなる。むしろ10年の時を経て、観るべき作品かもしれない。

『パラダイス・ナウ』(DVD 発売中)

パレスチナ、ガザ地区の現実をベースにしつつ、物語自体は普遍的な作品も多く、『テルアビブ・オン・ファイア』のサメフ・ゾアビ監督が脚本を書いた『歌声にのった少年』(15年)は、スター歌手をめざす少年が主人公。その運命をガザの現実が左右するものの、少年少女のバンドムービーとして感動させる。

一方で、パレスチナ問題はほとんど描かないイスラエル作品で、日本公開時にも映画ファンの間で評価された作品がある。『彼が愛したケーキ職人』(17年)だ。イスラエルとドイツの合作で、ベルリンのカフェのケーキ職人が、イスラエルから出張で来ていた妻子持ちの男性と恋人関係になるも、男性は事故で急死。その事実を知らないケーキ職人が、彼を訪ねてエルサレムにやって来る。男性同士の恋をことさら際立たせることなく、“多様性”をサラリと描ことで、切なさを倍増させる“新しい”作品になっていた。同じ中東でも、イランの『別離』(11年)や『セールスマン』(16年)のように、アカデミー賞外国語映画賞を受賞し、日本公開される作品が、社会問題をテーマにしたものが多いのに比べ、イスラエルの作品は意外にもバラエティが富んでいたりする。

『彼が愛したケーキ職人』(DVD 発売中) ©All rights reserved to Laila Films Ltd.2017