※このコラムには、『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』のネタバレが含まれています。
映画を観るなら最後まで
『スパイダーマン:ホームカミング』では、ラモーンズの1976年デビュー曲『Blitzkrieg Bop』、『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』ではゴーゴーズの1982年のヒット曲『Vacation』と作品のメッセージをエンドロールにてほんのり音楽で伝えてきた”ホーム”シリーズ。
パンクが2作続いて本作ではヒップホップ。デ・ラ・ソウルの1989年デビューアルバムの1曲め『The Magic Number』だ。フレーズをアメリカの子供向け教育番組で流れていた『Three Is A Magic Number』からとって、ドラムはレッド・ツェッペリンの『The Crunge』をループしている。元ネタがあり、サンプリングする90年代ヒップホップDJスタイルは、本作にふさわしい。“3は完璧な組み合わせをつくれる魔法の数字”という歌詞と、前作で、AC/DCの『Back In Black』をピーターが「ツェッペリン最高!」と間違えた件も回収される演出が心憎い。
公式予告でエレクトロ役のジェイミー・フォックスが「SNSは見るなよ、ネタバレ禁止」と言っていたのは、ダチョウ倶楽部の「押すなよ、絶対押すなよ」と個人的に一緒だと思っている。本作のわかりやすい面白さは、メタ要素がふんだんに詰まったネタバレ部分にある。だから、これを早く誰かに伝えたい!共有したい!と観客に思わせる。主演のトム・ホランドが「愛する人と観てほしい」と言ったのはそういうことだ。いま自分に起きていることで落ち込んでいても、決して独りではないこと。過去に後悔していることはやり直せる。また、ひとつの過ちを咎めるのではなく、寄り添うことが大事で、そして、それを分かち合える親愛なる隣人がいる。そういうことをスパイダーマンは教えてくれる。
そしてマーベルおなじみのポストクレジットでは、本編で登場しなかったアイツが登場する。通例なら今後につながるヒントが描かれるのでお見逃しなく。これからのスパイダーマンは、どうなるのか?劇場で鑑賞した後、過去作を振り返り、未来の新作に想像を巡らせてほしい。
文 / 小倉靖史
世界中にスパイダーマンであることを明かされたピーター・パーカー。ドクター・ストレンジはピーターから頼まれ、人々の記憶からピーターがスパイダーマンだという記憶を消す呪文を唱えるが、やがて時空が歪み、マルチバースが出現。それぞれのユニバースから過去のヴィランたちを呼び寄せてしまう。
監督:ジョン・ワッツ
製作:ケヴィン・ファイギ、エイミー・パスカル
出演:トム・ホランド、ゼンデイヤ、ベネディクト・カンバーバッチ、ジョン・ファヴロー、ジェイコブ・バタロン、マリサ・トメイ、アルフレッド・モリーナ、ウィレム・デフォー、ジェイミー・フォックス
配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
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