※このコラムには、『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』のネタバレが含まれています。
大いなる力には大いなる責任が伴う
これまで、トビー・マグワイア版、アンドリュー・ガーフィールド版のピーター・パーカーは、ベン伯父さんの死をきっかけに、スパイダーマンとして正義を貫こうとする。名台詞「大いなる力には大いなる責任が伴う」。この言葉を胸に自分が何をすべきか、ヒーローとはなにか自問自答し、苦悩してきた。
トム・ホランドのMCU版では、過去シリーズの影響を考慮し、現時点でスパイダーマン誕生秘話が描かれていない。初登場でアベンジャーズにスカウトされて、まだヒーローとして成長段階にある。しかし、本作で彼は直面する。ヒーローの孤独、そしてピーターとしての人生とヒーローとしての人生、どちらを選ぶか。ここから物語が一気に動き出す。そのシーン、詳しく言えないけれど、車で突っ込むハッピーが、セリフが少ないのに全部察する感じでめちゃカッコいい。『シェフ 三ツ星フードトラック始めました』以来、彼で泣いちゃったよね。
後半は、マルチバースというそれぞれの設定の違いを見事に逆手に取り、ちょっとした冗談で笑いを誘い、そして同時に涙も誘う名シーンが連発する怒涛の展開だ。うん、そういう世界線があってもいいよね!と思わず口に出してしまいそうになる。
こんなシーンを観ると、やっぱ「金田一耕助は古谷一行版じゃなくて、石坂浩二版だよな!」とか「いまじゃ第7宇宙とか言っちゃってさ、ドラゴンボールはやっぱフリーザ戦までだよな!」とか言っていた自分が恥ずかしくなる。みんな違っていい。SDGsでダイバーシティなんですよ。だから、サンドマンって、エレメントズ名義で前作にもいなかった?とか、「デイリー・ビューグル」のジェイムソン編集長が先にマルチバースしてね?というツッコミはしないであげてほしい。