Jan 07, 2022 column

君は3000回愛しているか!?『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』は正統派お正月映画だ

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※このコラムには、『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』のネタバレが含まれています。

シネマティック・ユニバースでマルチバースの扉が開かれるってどういうコト?

「『違う次元が開くことによりマルチバースが誕生!』ってなんのこっちゃ?」を説明する前に、マーベルファンでない人に、マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)からお話ししたい。本作を含むMCU作品とは、マーベル・スタジオ制作のスーパーヒーロー映画を共通した世界観でクロスオーバーさせていくこと。すべては同一の宇宙、ユニバースで起こった出来事という意味だ。

スパイダーマンは、マーベル・コミック原作であるものの、過去、映画化の版権を大人の事情でソニー・ピクチャーズに売却しており、違う世界線に住んでいた。近年、映画化権をシェアすることで、トム・ホランド版からMCUの世界で語られるようになった。スパイダーマンシリーズが、Disney+じゃなくて、Netflixとアマゾンプライムで観られるのはそういうことだ。

続いて、過去シリーズについて振り返ろう。サム・ライミ監督の手首から直接糸が噴射するトビー・マグワイア版ピーター・パーカーは『スパイダーマン』(02)で親友の父であるグリーンゴブリン、『スパイダーマン2』(04)で尊敬する学者だったドック・オク、『スパイダーマン3』(07)でサンドマン、ヴェノムと戦った。ヒロインMJ(メリー・ジェーン) と愛を育みつつも、ピーターとしての人生とヒーローとしての人生に悩み、最終的に別の道を歩むことになり完結。

マーク・ウェブ監督により、リブートされた『アメイジング・スパイダーマン』シリーズ。失踪した両親の行方を探すため、父の元勤務先で能力を手に入れたアンドリュー・ガーフィールド版ピーター・パーカーは、ウェブ・シューターとコスチュームを自作。父の同僚だった博士が変異したリザードと『アメイジング・スパイダーマン』(12)で戦い、『アメイジング・スパイダーマン2』(14)では、スパイダーマンの熱烈ストーカーだったマックスことエレクトロを撃破。その後、親友が変異したグリーンゴブリンとの戦いの最中、落下してしまった最愛の恋人・グウェン・ステイシーを救えず亡くしてしまう。悲しみから立ち直り、変なサイの装甲スーツを着たヴィラン、ライノと戦うシーンがラストに流れたので、続編を期待させたが、残念ながら打ち切りに。

そしてジョン・ワッツ監督によるMCUの世界で描かれる、トム・ホランド版ピーター・パーカーは、『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』(16)で初登場。『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』(18)『アベンジャーズ/エンドゲーム』(19)を間にはさみ、これらのストーリーを共有しながら『スパイダーマン:ホームカミング』(17)、『スパイダーマン:ホームカミング』(19)とアイアンマンことトニー・スタークにスカウトされ、彼を師事しヒーローとはなにかを学び、愛され、アベンジャーズ入りした。スターク・インダストリーズの技術による最も高性能なスーツを来て、好きな女の子の父親を倒したり、アベンジャーズの生みの親、元S.H.I.E.L.D.長官に旅行をハイジャックされながら、不器用な優しいヒロインMJ(ミシェル・ジョーンズ)との恋を実らせ、いまヒーローの使命に目覚めつつある。

基本的に、どのピーター・パーカーも、頭はいいけど冴えない理系の高校生で、ある日クモに噛まれてスーパーパワーを手に入れる。思いを寄せる女の子がいる等身大の主人公像で、みんなが大好き野比のび太やアムロ・レイのように自己投影しやすいのが特徴だ。助けてくれたり、世話になったおじさんに迷惑かけるのも共通している。中でもトム・ホランドの演じるピーター・パーカーは若く「坊やだからさ」感が強い。

あと、歴代の3組、どのカップルもリアルガチで交際するから不思議。スパイダーマンは、恋愛映画という見方もあり、口元だけマスクをめくった雨の逆さキス、糸で引き寄せキスとヒロインとのキスシーンは見どころのひとつだった。本作では、どんなキスシーンになるのかも注目だ。