前売り発売初日『アベンジャーズ/エンドゲーム』の売上を超え、全米オープニング興行収入、ならびに全世界オープニング興行収入歴代3位(2021年12月20日現在)となった『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』。まさに全世界が期待していた娯楽大作は、アメコミ・ヒーロー好きな方はもちろん、マーベル作品って、ちょっと取っ付きにくいんだよなという方も楽しめる内容だ。本作では過去登場した悪役が集結することが話題になっていることから、シリーズを振り返りながら、その魅力をお伝えしたい。
※このコラムには、『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』のネタバレが含まれています。
さて問題。アナタはいくつ分かりましたか?というくらいオマージュたっぷり!?
鑑賞後、ファンならその愛が試され、そうでなくてもスパイダーマンをもっと知りたくなる。『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』は、そんな映画だ。前作『スパイダーマン:ホームカミング』のラストにて、アース833からこのアース616にやって来た別次元のヒーローと嘘をついていた、ミステリオことクエンティン・ベックに、殺人犯に仕立て上げられて、正体もバラされた。本作はその続きから始まり、予告篇にあるとおり、本来出会うことのなかった、過去のスパイダーマンシリーズの悪役である、グリーンゴブリン、ドック・オク、サンドマン、リザード、エレクトロといったヴィランたちが集結して、襲いかかってくることになる。
こんな内容なので、「あれ?この橋の戦闘シーン、見たことあるような‥‥」と、過去シリーズ鑑賞済みなら、デジャヴュのようなシーンがふんだんに盛り込まれている。冒頭からサム・ライミ版『スパイダーマン』でMJが吊るされた、ルーズベルト島行きのロープウェイが登場して、リスペクトを超えるとマルチバース化するの?と変な解釈をしてしまいそうなくらい匂わせがプンプン。過去のオマージュと未来の予言が織り交ぜられて、まるでクイズのようだ。「トニー・スタークのように『3000回愛している』って言える?」と、ファンとして問われているような気分さえする。
本作同様みんなに正体がバレた『スパイダーマン2』では、誰にも言わないよと民間人は優しくしてくれたが、今回は違う。すぐにスマホで撮影し、SNSにあげて、登校中に検査をする『1984』さながらの監視社会。友人3人そろって入学を希望したMITにも、スパイダーマンとその仲間であることを理由に、ふさわしくないと拒否される始末。自分が周りに迷惑をかけることに心を痛めた主人公ピーター・パーカーは、『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』『アベンジャーズ/エンドゲーム』で一緒に戦った、ドクター・ストレンジに、人々に自分の正体を忘れてもらう呪文をかけてほしいと頼み込む。が、これが失敗して時空が歪んでしまい、違う世界の扉が開いてしまう。
スティーブンとか馴れ馴れしい呼び方をしまいがちなピーターに、なんだかんだ優しいツンデレのストレンジの、いつもどおり子供が大人を巻き込んでいく展開にほくそ笑む。がしかし、ヴィランをただ元の世界に戻そうとするストレンジと彼らを救おうとするピーターは意見を違え戦うことになる。鏡の結界の中での超絶戦闘シーンは見どころのひとつだろう。ちなみに本作の戦闘シーンは、『TENET』を手掛けたスタント・コーディネーターがつくっているそうだ。 また大集合したヴィランの中では、グリーンゴブリン役のウィレム・デフォーに注目してほしい。自分が乗る空飛ぶグライダーで死ぬし、爆弾投げるだけでパッとしないコスチュームだしと、過去シリーズでは個人的に一番ピンと来てなかったのだけれど、今回はイカれた演技が凄い。マジ最高。