Apr 21, 2019 column

“逆・名探偵コナン”なDC新ヒーロー『シャザム!』、映画&原作コミックそれぞれの魅力、違いを解説!

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【注釈】※映画のネタバレに繋がる部分がございます。鑑賞前の方はご注意ください。

原作のビリーとフレディはもっと生意気?!

早くも続編製作の噂が後を絶たないなど、『アクアマン』に続く旋風を起こしている『シャザム!』が、満を持して日本上陸となった。だが、日本では馴染みがない。ここでは映画『シャザム!』を深く知るために、原作コミックである「シャザム!:魔法の守護者」(小学館集英社プロダクション刊)の方にも迫ってみたい。

1938年に生み出された「スーパーマン」の大ブームに沸き立つアメリカのコミック市場。各出版社がこぞってオリジナルヒーローを生み出す中、1939年末に「シャザム!」は誕生した(1940年デビュー説もある)。子どもが超人に変身するという設定が大いに受け、本国アメリカを始め各国でブームを巻き起こした。他のDCヒーロー同様、様々な変遷を潜り抜け2012年より始まった、シリーズ「The NEW 52!」が今回の映画版のベースとなっている。映画『シャザム!』は、原作に最大級のリスペクトを払いながら、大きなブラッシュアップを加え、強靭に仕上げられているのだ。

まずはビリーのキャラクター。原作でのビリーは15歳。強烈な皮肉屋でみなしごゆえの陰を色濃く感じさせる性格。一方では弱いものイジメを見たら暴力も辞さない熱い心を持つ大人びた少年として描かれている。映画版ビリーは14歳と、原作から一つ引き下げられ、陰を強く感じさせながらもどこか明るさを忘れていない、よりヤンチャな少年として描かれている。

ビリーと共に活躍する里子たちも、大胆な変更が加えられている。特に悪友にしてソウルメイトのフレディは、大胆なキャラ造形となった。原作ではビリー以上の皮肉屋にしてナンパで口八丁手八丁と、どこか不良然としたキャラだ。しかし映画では一転。スーパーマンTシャツに袖を通し、部屋にレプリカのバットラングを飾る、極度のヒーローオタクに。彼の存在を通して、ビリーはバカ騒ぎとイタズラを繰り返しながら力と使命に目覚めていくなど、原作以上にバディとしての側面が強調されている。ストーリーラインも大まかな流れは原作を遵守しているが、ビリーとフレディの時間に多くを割いているのも本作を魅力的にたらしめている。

また里子たちは、原作で“メンター”(指導者)的役割を担う、鏡の精・フランチェスカの代わりも務めている。原作以上に、5人全員がビリーを正しい力の発露へと導く設定は、より良い意味でファミリー映画としての側面を強化しいている。

そして本作の白眉の一つである、Dr.シヴァナのキャラ造形だ。「The NEW52!」におけるシヴァナは、現代科学では救えない病を負った家族のために、魔力の復活を望むあまり闇へと囚われていくという、同情の余地が“まだ”残されていたキャラクターであった。しかし映画版では、自分こそが力を持つに相応しい特別な存在だと信じてやまない傲慢さを持ちながら、自分を虐げてきた家族への復讐心に囚われ続けた哀しい男として、見事なヴィランとしての深みを得た。演じるマーク・ストロングの特徴的な長い四肢が、シヴァナの不気味さを際立たせているのも素晴らしい。

また、シヴァナが従える邪神的存在の“七つの大罪”の造形も、原作版のどこかファニーさも感じさせるタイプのデザインだったのに対し、映画版は極悪なクリーチャー然としたデザインになっており、より邪悪さが引き立っていた。映画では、バスケス一家と対立する金持ちで鼻持ちならないブライヤー一家の存在が完全にオミット。ブライヤー家の父が“七つの大罪”に憑りつかれ変身する怪物サバックも、本作は未登場だ。

……などなど、ここには記しきれないほど、コミック版はまた映画版とは違った形で、素晴らしいファンタジーを描いている。映画を思い切り楽しんだ方は、ぜひコミックも手に取って、「シャザム!」の世界にドップリと浸かってほしい。

文/ますだやすひこ

作品情報
『シャザム!』

身寄りのない思春期ど真ん中の子供、ビリー。ある日突然、彼は魔術師からスーパーパワーを与えられる。「シャザム!」と唱えると、筋肉隆々、稲妻を発することが出来るスーパーヒーローに変身できるのだ。ヒーローオタクのフレディと一緒に悪ノリ全開。そんなスーパーパワーを無駄遣い中のビリーの前に、科学者Dr.シヴァナが現れ、フレディがさらわれてしまう…。
監督:デヴィッド・F・サンドバーグ
製作:ピーター・サフラン
出演:ザッカリー・リーヴァイ、アッシャー・エンジェル、マーク・ストロング、ジャック・ディラン・グレイザー
配給:ワーナー・ブラザース映画
公開中
©2019 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC.
公式サイト:http://shazam-movie.jp/