長編初監督作『blank13』で映画監督としての確かな手腕を発揮
そんな彼が数年前から短編映画やドキュメンタリー、大橋トリオのMVを監督していたのはごく自然の流れ。そしてこの2月に公開された、満を持しての長編初監督作『blank13』は悲しくも面白い家族の物語だ。13年前、借金を残して蒸発していた父親(リリー・フランキー)が余命わずかの状態で見つかる。兄(斎藤工)も母親(神野三鈴)も見舞いには行かないけれど、幼い頃にキャッチボールをしてもらった記憶が残っている弟のコウジ(高橋一生)だけは病院に。しかし病床にいてもなお、金の工面をしている父親を見てげんなりしてしまう。その後、亡くなった父親の葬儀には数少ない参列者がやって来て、家族が知らなかった父親の意外な一面を語っていくのだが…。
回想シーンと葬儀シーンの絶妙な編集とテンポ、繊細でユーモラスでありながら抑えた演出、セリフに頼らず画で見せるストーリーテリング。泣きそうなのになぜか笑ってしまう。心の奥底をじわりと押すような、実に滋味深い余韻を残すこの作品。錚々たるキャスト陣をはじめ、音楽監督を金子ノブアキ(兼出演)、スチールをレスリー・キーが担当、齊藤工(クリエイター活動ではこちらの名義を使用)が絶対的な信頼を置く実力者たちが集結していることも含めて、監督としての手腕の確かさを発揮。上海国際映画祭最優秀監督賞(アジア新人賞部門)を受賞するなど、さまざまな映画祭で評価されており、決して“俳優が監督をしてみました”という結果に終わっていないのがさすが。早くも齊藤工監督の次回作にも期待せずにはいられない。
さらに、KinKi Kidsのシングル「薔薇と太陽」のジャケット写真、綾野剛や柄本佑のオフィシャルスチール等を撮影する写真家としての顔も持っている斎藤工。幅広い交流関係を誇り、役者仲間はもちろん、サブカル系の映画人たちにも愛される。メジャー系であれアート系作品であれ、役柄の大小に関わらず、自身に求められた役割をきっちり果たし、結果を出す。観る者としても表現する者としても誰よりもアツい映画愛を持っている。インタビューではどんな質問にも常に丁寧に真面目に受け答えする姿勢を見ていると、周囲の人や物事にきちんと向き合う誠実な人柄だと感じる。これからも一俳優に留まらない映画人として、表現者として、さまざまな方向から映画界を牽引していく彼に注目していきたい。
取材・文/熊谷真由子
『去年の冬、きみと別れ』
公開中
配給:ワーナー・ブラザース映画
©2018映画「去年の冬、きみと別れ」製作委員会
『昼顔』
通常版Blu-ray:4700円(税抜) DVD:3800円(税抜)
豪華版Blu-ray:6700円(税抜) DVD:5800円(税抜)
発売中
発売元:フジテレビジョン 販売元:ポニーキャニオン
©2017 フジテレビジョン 東宝 FNS27社
『虎影』
ブルーレイ:5000円(税抜) DVD:4000円(税抜)
発売中
発売・販売元:ハピネット
©2014「虎影」製作委員会 / 提供:応援団
『ブルーハーツが聴こえる』
Blu-ray:5800円(税抜) DVD:3800円(税抜)
発売中
発売元:日活 販売元:ポニーキャニオン
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『blank13』
公開中
配給:クロックワークス
©2017「blank13」製作委員会