『PARKS パークス』(DVD&ブルーレイ発売中) ©2017本田プロモーションBAUS
多くの映画が公開された2017年、今年のベスト映画と来年の期待作は?上映館数が限られ、派手な宣伝もなかったために見逃されがちだったけれど、新鋭監督のエッジの効いた演出とキャスト陣の熱演が光ったインディペンデント系映画の“隠れた良作”を中心に振り返ってみよう。
2018年1月5日(金)から永井豪原作『DEVILMAN crybaby』がNetflixで配信され、注目度がぐんと高まりそうなのが湯浅政明監督。2017年はアヌシー国際アニメーション映画祭で『夜明け告げるルーのうた』が最高賞を受賞するなど世界がその才能を認めたものの、天才肌の監督ゆえに知る人ぞ知る存在だった。森見登美彦原作のベストセラー小説を劇場アニメ化した『夜は短し歩けよ乙女』は星野源、花澤香菜、神谷浩史、秋山竜次(ロバート)ら人気キャストを声優として迎え、かつてないメジャー仕様の作品となっている。黒髪の乙女の可憐さには、先輩ならずともときめいてしまうに違いない。
2017年4月期にオンエアされたNHK連続テレビ小説「ひよっこ」に米子役で出演した伊藤沙莉は、コクのある演技で視聴者を魅了したが、「ひよっこ」に登場して話題を集める直前に劇場公開されていた主演映画が『獣道』だった。『愛のむきだし』(09年)などで人気の園子温監督が欧州でブレイクするきっかけをつくった英国人プロデューサーのアダム・トレル氏が製作し、インディペンデント映画界の実情を描いた『下衆の愛』(16年)の内田英治監督と再びタッグを組んだ社会派コメディ。伊藤沙莉演じる主人公・愛衣は親の愛情を知らずに育ち、カルト教団、ヤンキー一家、平凡な中流家庭と様々な環境に合わせて擬態を繰り返していく。『愛のむきだし』を思わせる怒濤の“居場所さがし”の物語が94分の中に凝縮され、伊藤沙莉の女優としての伸びしろを大いに感じさせる快作だった。
都内の人気スポット・吉祥寺井の頭公園を舞台に、橋本愛が爽やかな歌声を聞かせてくれる瀬田なつき監督の『PARKS パークス』も忘れがたい。橋本愛は『告白』(10年)やNHK連続テレビ小説「あまちゃん」(13年)で10代の少女ならではの危うい魅力を放っていたが、『PARKS パークス』では恋人に去られ、大学も留年すれすれという生身の女子大生役を等身大で演じており好感度大。橋本愛のアパートに居候する不思議ちゃん系高校生・永野芽郁も、CM以上に繊細かつ豊かな表情を見せてくれ退屈させない。年末年始に心の洗濯をしておきたい人におススメの一品。
エクストリームな作品が次々と生まれているのが今の韓国映画シーン。“ゾンビ映画の父”ジョージ・A・ロメロ監督が亡くなったことも2017年映画界のニュースだったが、実写映画デビューを飾ったヨン・サンホ監督の『新感染 ファイナル・エクスプレス』はゾンビ映画に新しい興奮をもたらした衝撃作だった。ゾンビ感染者がソウル市内に続出する恐怖を描いたパニックムービーだが、時速300kmで走り続ける高速鉄道内に舞台を限定したことで、製作費を抑えつつ、緊張感たっぷりなサスペンスに仕立ててみせた。アニメーション出身のサンホ監督の演出が見事。ゾンビ映画に興味がない人も、究極の親子愛・夫婦愛を描いた感動作として楽しめるはず。