日本作品の強力なライバル、もし作品賞が『ROMA/ローマ』なら…
『未来のミライ』は、ゴールデン・グローブにもノミネートされたほか、アニメーション賞の最大の前哨戦であるアニー賞で、インディペンデント作品賞を受賞。ただし、ゴールデン・グローブや、アニー賞でメインとなる長編アニメーション賞は『スパイダーマン:スパイダーバース』が受賞しており、アカデミー賞での逆転は難しそう。純粋にノミネートを祝福したい。
一方の『万引き家族』も、同じ外国語映画賞に強力なライバルがいる。メキシコ(スペイン語)の『ROMA/ローマ』だ。ゴールデン・グローブと違って、アカデミー賞は作品賞と外国語映画賞の候補が重なることが可能。つまり受賞も問題ない。『ROMA/ローマ』は作品賞と外国語映画賞の同時受賞という可能性もあるのだ。しかし過去に、同時受賞の例はない。2000年度の『グリーン・デスティニー』が両部門にノミネートされたときは、外国語映画賞のみ受賞した。作品賞にもノミネートされるほどの作品なので、外国語映画賞は受賞して当然、という流れである。しかし『グリーン・デスティニー』の場合は、作品賞を受賞する可能性は極めて低かった。『ROMA/ローマ』はその可能性があり、そうなるとアカデミー会員に「『ROMA/ローマ』が作品賞なら、外国語映画賞は他の作品を評価しよう」という心理がはたらくかもしれない。
『万引き家族』もカンヌ国際映画祭のパルムドールや、これまでの前哨戦の結果は申し分なく、アメリカの配給会社もオスカーキャンペーンに力を入れてプッシュしている。しかし今年の外国語映画賞には他にも強力なライバルがいて、ポーランドの『COLD WAR あの歌、2つの心』は監督賞や撮影賞にもノミネートされているので、『ROMA/ローマ』にも劣らない作品全体の勢いがある。ただ、同作のパヴェウ・パヴリコフスキ監督は4年前の『イーダ』ですでにアカデミー賞外国語映画賞を受賞しており、2度目はそう簡単ではない……というわけで、『万引き家族』が、10年前の『おくりびと』の再現となる希望は残されている。
『ボヘミアン・ラプソディ』や『万引き家族』など、例年になくわれわれ日本人にとっても親しみのある作品が、最後まで激戦に加わっている。それだけでも今年のアカデミー賞授賞式への期待度は高いのではないか。「予想できない」サプライズを待ちたい。
文/斉藤博昭
Netflixオリジナル映画『ROMA/ローマ』
独占配信中
『女王陛下のお気に入り』
公開中
配給:20世紀フォックス映画
© 2018 Twentieth Century Fox
『グリーンブック』
2019年3月1日公開
配給:ギャガ
© 2018 UNIVERSAL STUDIOS AND STORYTELLER DISTRIBUTION CO., LLC. All Rights Reserved.
『バイス』
2019年4月5日公開
配給:ロングライド
© 2018 ANNAPURNA PICTURES, LLC. All rights reserved.
『ブラック・クランズマン』
2019年3月22日公開
配給:パルコ
© 2018 FOCUS FEATURES LLC, ALL RIGHTS RESERVED.
『ボヘミアン・ラプソディ』
公開中
配給:20世紀フォックス映画
© 2018 Twentieth Century Fox
『万引き家族』
通常版 Blu-ray:4700円(税抜) DVD:3800円(税抜)
2019年4月3日発売
発売元:フジテレビジョン
販売元:ポニーキャニオン
©2018フジテレビジョン ギャガ AOI Pro.