May 10, 2024 column

成龍時代は終わったのか? ジャッキーのすべてを確認せよ「ジャッキー・チェン(4K)映画祭」&最新作『ライド・オン』

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ジャッキー・チェン50周年記念映画『ライド・オン』が5月31日に公開される。2024年の今年は『ドランクモンキー 酔拳』日本初上陸から45周年という節目のメモリアルイヤーでもある。

『ライド・オン』の公開に先駆けて、「ジャッキー・チェン(4K)映画祭」が5月10日より新宿ピカデリーほかで開催されており、4Kとなって蘇った、ジャッキー自身がフィルモグラフィでベストという『ポリス・ストーリー/香港国際警察』(1985)、サモ・ハン・キンポー、ユン・ピョウを加えたBIG3と評された彼ら最後の共演作『サイクロンZ』(1988)、1930年の香港を舞台に闇社会のボスとなった青年を描いた『奇蹟/ミラクル(1989))の3作品が上映されている。

劇場最新作の公開を機に、今一度ジャッキー作品を思い出してほしい。

伝説のスタントマン

今年4月7日に70歳を迎えたジャッキーは、最新作『ライド・オン』で、かつて香港映画界伝説のスタントマンと言われたルオ・ジーロンを演じている。

彼は、いまでは第一線を退き、愛馬・チートゥとともに、地味な仕事をこなしながら生活していたが、債務トラブルに巻き込まれ、チートゥが競売にかけられる危機に瀕してしまう。困ったルオは、疎遠になっていた法学部の学生である一人娘のシャオバオ(リウ・ハオツン)に、助けを求めた。

同時に「愛馬と映画を撮ろう」と、再びスタントマンとして危険な撮影現場に立ってほしいという話が舞い込む。なんとかチートゥを守ろうとルオは、愛馬とともに危険なスタントシーンに立ち向かう。

本作は父と娘、愛馬が織りなす再起をかけた人間ドラマであると同時に、中国映画を支えてきたスタントマンたちへの讃歌でもある。

劇中には、ルオの過去のスタント映像として、これまでジャッキーが演じてきた沢山の作品から命懸けアクションシーン、例えば『プロジェクトA』(1983)の時計台からの落下、『ポリスストーリー 香港国際警察』(1985)の傘を使ったバスへの飛び移りなど、心に残る数々の名シーンが使用されている。それらは本作の役柄と作品自体に大きな説得力を与えている。

そのほか『ドランクモンキー 酔拳』(1978)での、腰を落とし、お尻の下に線香、太ももには水の入った器をのせ空気椅子状態を保つ鍛錬「馬歩站椿」をはじめ、『スパルタンX』(1984)、『プロジェクト・イーグル』(1991)、『THE MYTH/神話』(2005)から抽出されたオマージュ要素が散りばめられ、70歳のジャッキーが、あの時と同じように、飲み屋で喧嘩し、椅子を使ったトリッキーなカンフーアクションを見せる。

もちろん、ジャッキー作品の笑いもきちんと盛り込まれている。若かりし頃の出演作同様、高級料理店でガツガツと暴飲暴食をするジャッキーは「これは癖なんだ」と言ってみたり、新しく購入した服が、白のシャツジャケットに白のワイドパンツといった、誰もが見たことあるジャッキーファッションであったりと、ジャッキー映画ならではの笑えて楽しめる内容となっている。

集大成と言われる理由

最新作を見れば、必ず過去作品を観たくなるし、過去作品をおさらいしてから最新作を観るとより面白くなるだろう。

というのも、『ライド・オン』が、ルオというスタントマンを演じてはいるが、そのまんまジャッキー・チェン自身の半生を描いているように見えてくるからだ。

印象的なセリフがいくつかある。「スタントマンは殴られることで始まる」というセリフがあるが、無名時代のジャッキーが、『ドラゴン怒りの鉄拳』(1972)に門下生のエキストラとして出演し、終盤でブルース・リーに蹴られ、障子を突き破るシーンでのスタントマンを務めていたことを知る人にとっては感慨深いし、ジャッキー作品のエンドロールに流れる壮絶なスタントNGシーンを観ればその凄みが分かる。

また、ジャッキーファンなら周知のとおりだが、彼は、ただの爽やかなスターではない。中国共産党の宣伝マンとしての一面や日本人タレント・歌手との熱愛スキャンダル、隠し子報道などが世に報じられてきた。唯一認めた隠し子・不倫関係では「自分は全世界の男性が犯すかもしれない過ちを犯した」と発言し世間を騒がせた。

私生活では自由奔放な発展家の彼が、劇中で「私は父親失格です」と言ったり、「(娘の)喜ばせ方がわからない」と嘆いたりする。まるでダメ親父という役柄を借り、本人自身が自責の念に駆られて赦しを乞いているように見えなくもない。

「昔気質は今の客にはわからない」と言いつつも「飛ぶのは簡単だが、やめることが難しい」と人生をかけたスタントマンという職業の継続に迷う姿は、このまま引退してしまうのではないか?と思うぐらい切ない。

ゴールデン・ハーベストのロゴ、中国・香港ではみんなカンフーができるんだと思っていたあの頃、ジャッキーに育てられ、ジャッキーに熱狂した時代が確かにあった。テレビ放送の翌日には男の子はカンフーを真似していたし、「ドラゴンボール」も「キン肉マン」だってジャッキーの影響を受けていた。

まさに集大成と言える『ライド・オン』には、ジャッキー・チェン作品のほぼ全ての出演作において吹き替えを担当し、2023年3月末をもって声優業引退をした石丸博也が限定復活し、“レジェンド吹替版”も上映されるそうだ。あの声のジャッキーが観られるのは、ファンにはたまらない。

ただ昔を懐かしむもよし、ただ現在の姿を確認するもよし。もう一度、ジャッキー・チェンに会いに行ってはいかがだろうか?

文 / 小倉靖史

イベント情報
ジャッキー・チェン(4K)映画祭

主演映画50周年記念!伝説の数々が4K上映で蘇る。

《上映作品》
『ポリス・ストーリー/香港国際警察』(1985)
『サイクロンZ』(1988)
『奇蹟/ミラクル』(1989)

©2010 Fortune Star Media Limited. All Rights Reserved.

新宿ピカデリーほかにて開催中

公式サイト jackie4k.com

作品情報
映画『ライド・オン』

かつて香港映画界伝説のスタントマンと言われたが第一線を退き、愛馬・チートゥとともに、エキストラなどの地味な仕事をこなしながら生活する男・ルオ・ジーロンは、債務トラブルをきっかけにチートゥが競売にかけられる危機に瀕してしまい、借金取りに追われることとなり、疎遠になっていた法学部の学生である一人娘のシャオバオに、苦肉の策で助けを求めた。そんなルオのもとに「愛馬と映画を撮ろう」と、再びスタントマンとして危険な撮影現場に立ってほしいという話が舞い込む。不器用ながらもなんとかチートゥを守ろうとルオは、愛馬とともに危険なスタントシーンに挑戦する。

監督・脚本:ラリー・ヤン

出演:ジャッキー・チェン、リウ・ハオツン、グオ・チーリン、ユー・ロン、グアンディ・オン、ジョイ・ヨン、ユー・アイレイ、シー・シンユー、レイ・ロイ、ウー・ジン

配給:ツイン

©2023 BEIJING ALIBABA PICTURES CULTURE CO., LTD.,BEIJING HAIRUN PICRURES CO.,LTD.

2024年5月31日(金) ロードショー

公式サイト ride-on-movie