Jan 14, 2020 column

反骨の人イーストウッド!『リチャード・ジュエル』の魅力、代表作との共通点

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イーストウッドの反骨心

そして、これはもっともイーストウッドにとって重要な要素で、多くの監督作に見受けられるエッセンスだが、弱者の側に寄り添い、権力にノーを突き付ける反骨心。たとえば、証人護送を引き受けた酔っ払いの落ちこぼれ刑事が汚職警官たちに立ち向かいながら任務を遂行しようとするアクション『ガントレット』(77年)。警察内の腐敗した権力を敵に回し、命を狙われている証人の女性を守りながら孤立無援で戦い抜く、そんな主人公像は『リチャード・ジュエル』のジュエル&ワトソンにもリンクする。

『ガントレット』(Blu-ray・DVD 発売中) © 1977 Warner Bros. Inc.

失踪した息子の捜索を警察に依頼したことにより、腐敗したその内部構造に翻弄される母親の苦境を描いた実録ドラマ『チェンジリング』(08年)も、弱者側に寄り添っている点で共通する。権力を握った者は優位な立場にあぐらをかき、堕落しやすいものだ。『リチャード・ジュエル』の場合は、FBIやマスコミがそれにあたる。彼らは自分の職務を盾にとり、ジュエルが爆破犯であるという間違ったことを正しいことに仕立てようとする。苦境に追い込まれたジュエルはお人好しであることを捨て、そんな権力の横暴に立ち向かわなければならなくなるのだ。

SNSが発展した現在、それはメディアの役割を果たし、もっともそうな権威をまとい、時には罪のない者をなんの証拠もないまま一斉に袋叩きにすることがある。20数年前に起きた実話をいま映画化することの意味。それは反骨の人イーストウッドが、当時起こった不条理に、現代社会に通じるものを見たからではないだろうか。いずれにしても、『リチャード・ジュエル』は、観客に多くのことを投げかける力作である。

文/相馬学

公開情報
『リチャード・ジュエル』

1996年、アメリカのアトランタで起きた爆破事件。数千人の命を救ったのは、勇気ある警備員のリチャード・ジュエル(ポール・ウォルター・ハウザー)だった。しかし、国家とメディアの陰謀で、彼は容疑者として、顔と実名を世界中に晒されてしまう…。過熱する報道、FBIの執拗な追求、世論からの誹謗中傷。しかし、たった一人、彼の無実を信じる無謀な弁護士ワトソン(サム・ロックウェル)がいた。リチャードとワトソンは、巨大な権力に立ち向かうのだが――。
監督・製作:クリント・イーストウッド
原作:マリー・ブレナー、バニティ・フェア『American Nightmare:The Ballad of Richard Jewell』
脚本:ビリー・レイ
製作:ティム・ムーア、ジェシカ・マイヤー、ケビン・ミッシャー、レオナルド・ディカプリオ、ジェニファー・デイビソン、ジョナ・ヒル
出演:サム・ロックウェル、キャシー・ベイツ、ポール・ウォルター・ハウザー、オリビア・ワイルド、ジョン・ハム
配給:ワーナー・ブラザース映画
2020年1月17日(金)公開
© 2019 VILLAGE ROADSHOW FILMS (BVI) LIMITED, WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC
公式サイト:richard-jewell.jp

ブルーレイ情報
『ハドソン川の奇跡』

Blu-ray:2381円(税抜) DVD:1429円(税抜)
発売中
ワーナー・ブラザース ホームエンターテイメント
© 2016 Warner Bros. Entertainment Inc. and Ratpac-Dune Entertainment LLC. All rights reserved.

『ガントレット』

Blu-ray:2381円(税抜) DVD:1429円(税抜)
発売中
ワーナー・ブラザース ホームエンターテイメント
© 1977 Warner Bros. Inc.

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