Mar 08, 2017 column

ドラマ『カルテット』“まさか”の逆転劇!その裏に脚本家・坂元裕二からミステリーの魅力を引き出した出会いがあった

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実のところ、坂元裕二はミステリーやSFを描く作家のイメージは薄い。 これまでの人気作は、漫画原作で大ヒットした『東京ラブストーリー』をはじめ、血のつながらない女と子供の逃避行を描いた『Mother』 、2組の夫婦の悲喜こもごもを描く『最高の離婚』、地方から東京に出てきた若者たちの群像劇『いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう』など、今を生きる人間たちのリアルな感覚に肉薄し、人間関係の中からドラマを生み出すものばかり。ミステリーのニオイをさせていた『それでも、生きてゆく』も、あくまでも、ある事件をもとに時間が停まっていた者たちが再び動き出すまでを描く人間ドラマだった。 ラブストーリーも社会問題を扱ったもののサスペンスものもすべて、ある意味、愚直なまでに登場人物たちのガチなコミュニケーションの問題を描き続けてきた。 感動台詞、ユーモアのある台詞、洒落た台詞などのサービス精神はかなりあるが、いわゆるミステリーやSFのギミックを楽しませるというようなものではない。 とにかく彼の書くものの魅力は“人間”そのものだ。 それが今回、新たに、ギミックへの興味を視聴者に抱かせるような可能性を拓いたのはなぜか。坂元と初めて組んだプロデューサーの佐野亜由美氏の持ち味が加わったからではないかと思う。 佐野氏はTBS の気鋭のプロデューサーとして、オリジナルドラマがなかなか制作しにくい最近のテレビドラマの世界で、珍しくオリジナルドラマを多く手がけている。 『99.9—刑事専門弁護士—』(16年)が、わずか0.1%の無罪を勝ち取ろうと奮闘するというユニークな内容で、高視聴率をとったことも記憶に新しい。 ほかにも、「深夜帯ならではのエッジのきいた企画への挑戦や、TBSの次世代クリエイターの発掘と育成を目的に創設されました」(公式サイトより)という深夜ドラマ 水ドラ!!『おかしの家』(15年)は、映画監督・石井裕也が演出、オダギリジョーが主演の、下町の家族もので、取り立てて大きな出来事はないが、しみじみ味わい深いドラマを生み出した。 また、『ヘブンズ・フラワー』(11年)、『潜入探偵トカゲ』(13年)、『刑事のまなざし』(13年)、『ウロボロス〜この愛こそ、正義。』(15年)などミステリードラマを多く手がけてきた。 3月8日発売のテレビブロスで彼女へのインタビューを行ったところ、過去に弁護士を目指していたこともあるそうで、この手のドラマが得意なのだろう。 事件や謎の真実を解き明かしていく行為が最高にドラマチックであることをよくわかっているからこそ、『カルテット』はラブとミステリーが絶妙に絡み合ったものになった。坂元の得意とする人間関係が交錯していくときの細密描写にしても、そこには必ず人の心という謎があり、彼のドラマとミステリー仕掛けには親和性があったのだと思う。 ドラマには脚本家も演出家も俳優も大事だが、すべてを取りまとめるプロデューサーの力によるところはかなり大きい。 『カルテット』がこれほど話題になったのは、坂元と新たなプロデューサーとの出会いも大きかったと思う。やっぱり人と人との出会いが世界を変える。 まるで坂元のドラマそのものではないか。 残り2話、どんなラストが待っているか、楽しみだ。 大倉孝二の「誰でもない女ですね」という突き放した言い方が耳にこびりついて離れません。  

文 / 木俣冬

 
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