最大の魅力にして逸脱、ライアン・ゴズリング
『プロジェクト・ヘイル・メアリー』という映画で、ロード&ミラーの強力な制御から逸脱できたもの――ほとんど唯一といえるその存在が、主演俳優ライアン・ゴズリングだ。
彼の演じるグレースは、作品を支配する設計と制御のすきまから“人間らしさ”を画面ににじませる。宇宙でひとり過ごす孤独と、それとは相反する安堵のような心境の同居。肉体の重さや疲弊こそ軽やかなテンポの陰に隠れていても、その表情が崩れ、身体がふるえ、涙を流す瞬間に、生身の肉体があらわになる。その脆さが宇宙船での一人芝居にも、地球における他者との関わりにも、人間らしい厚みをもたらした。
細部まで完璧に制御された映画において、どうしても設計しきれない人間くささはどこか異物のよう。しかしそれこそが、ロジックや理由だけに回収できない”感情の機微”だ。誰も知らない宇宙の果てに残る、「ゆらぎ」としか呼びようのないノイズが、ひっそりとこの映画を支えている。
文 / 稲垣貴俊

未知の原因によって太陽エネルギーが奪われる異常事態が発生。このままでは地球の気温は低下し、全生命は滅亡する。この絶望的な危機を救う鍵が、11.9 光年先の宇宙にあると突き止めた人類は、一縷の望みをかけて宇宙船を建造。中学校の科学教師グレースを送り込む。彼は知識を武器に、“イチかバチか”のミッション〈プロジェクト・ヘイル・メアリー〉に立ち向かうことになる。
宇宙の果て、極限の孤独のなかで、グレースが出会ったのは、同じく母星を救うためにひとり奮闘する異星人ロッキーだった。 姿形、言葉も違う二人が、科学を共通言語に挑む、宇宙最大の難題。やがて育まれる種族を超えた友情の先で、二人が辿り着いた答えとは‥‥。
監督:フィル・ロード & クリストファー・ミラー
原作:アンディ・ウィアー「プロジェクト・ヘイル・メアリー」(早川書房刊)
出演:ライアン・ゴズリング、サンドラ・ヒュラー
配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
2026年3月20日 全国の映画館にて公開
公式サイト ProjectHM.movie