今年のお盆休みはいかがお過ごしでしょうか？ 予定のある方もない方も、いま話題となっている配信オリジナルの映画、ドラマシリーズを一気見するのにいい機会です。otocotoでは選りすぐりの人気作・話題作を紹介します。
高級車リンカーンを乗り回すプレイボーイ弁護士のサスペンス
2011年に公開されたマシュー・マコノヒー主演の映画『リンカーン弁護士』を筆者は見逃していて、タイトルから「若かりし日のエイブラハム・リンカーン大統領が、弁舌巧みに活躍する法廷劇」と思い込んでいたのだが、全然違いました。高級車リンカーンを乗り回す刑事弁護士が、後部座席を事務所代わりにして事件の真相に迫っていくサスペンス映画だったのである。南北が分裂した19世紀半ばの物語ではなく、めちゃめちゃ現代のお話であった。
原作はマイクル・コナリーのベストセラー小説、刑事弁護士 “ミッキー・ハラー” シリーズ。映画はその第1作目を映像化したもので、2作目「真鍮の評決」を映像化したのが、2022年5月にNetflixで配信開始したドラマ版(マイクル・コナリーもエグゼクティブ・プロデューサーとして参加)。グローバル週間TOP10の英語シリーズ部門で首位に輝き、1億809万時間というとてつもない視聴時間を記録。そして今年は、シリーズ4作目『証言拒否』を原作としたシーズン2も配信され、今やワールドワイドな人気を誇る法廷ドラマのひとつとなっている。
主人公のミッキー・ハラー(マヌエル・ガルシア＝ルルフォ)は、サーフィン事故で休業状態に陥っていた刑事弁護士。仕事仲間の弁護士ジェリー・ヴィンセントが何者かによって殺害されてしまったことから、彼が抱えていた案件がごっそり引き継がれることに。1年のブランクを経て、“リンカーン弁護士”ことミッキー・ハラーが復活する！
法廷ドラマといえば、ひとつの案件を解決としては次、また解決しては次というように、一話完結型がほとんどだが、この『リンカーン弁護士』は一味違う。何せ複数の案件を抱えているものだから、ドラマ的にも複数の事件が同時進行するせわしなさ。法廷から別の法廷へとかけずり回り、必然的に形式も続きものに。主人公も大変だが、観ているこっち側も脳内処理が大変である。
2度の離婚を経験し、高級車を乗り回すミッキー・ハラ―はいかにもプレイボーイという出立ちだが、弱きを助け強きを挫く、アツい理想を掲げた弁護士。そして彼の周りには、常に頼りになる女性たちがいる。最初の妻マギー(ネーヴ・キャンベル)は、優秀な検事補。2番目の妻ローナ・クレーン(ベッキー・ニュートン)は事務所の秘書を務め、離婚後も彼をサポートし続けている。無一文の依頼人だったイジー(ジャズ・レイコール)は、弁護料を支払う代わりにミッキーの専属ドライバーとなった。魅力的なキャラクターたちが、このドラマを賑やかに彩っている。
本作のシナリオを担当したのは、デヴィッド・E・ケリー(妻は、女優のミシェル・ファイファー！)。ボストンで弁護士として働いていた実績を持ち、「L.A.ロー 七人の弁護士」、「ザ・プラクティス」、「アリー my Love」、「ボストン・リーガル」を手がけてきた、法廷ドラマの名手だ。白熱した論戦、巧妙に張り巡らされた伏線、どんでん返し、意外な真犯人。これまでの経験・知見が、「リンカーン弁護士」に惜しみなく投入されているのだ。
小説の “ミッキー・ハラー” シリーズは、これまでに全6作が刊行されている。法廷ドラマの名手がベストセラー小説を手がけた“品質保証ドラマ”は、シーズン3、シーズン4も今後期待できそうだ。
文 / 竹島ルイ
事故により休業状態となっていた、LAのやり手弁護士ミッキー・ハラー。1件の殺人事件をきっかけに、トレードマークのリンカーンに乗り込んで再び法廷に舞い戻る。
原作・制作：デイビッド・E・ケリー
出演：マヌエル・ガルシア＝ルルフォ、ネーヴ・キャンベル、ベッキー・ニュートン
Netflixにて全世界独占配信中
