Aug 13, 2023 column

現代的なテーマを孕んだ、エモーショナルなスパイ・アクション『ハート・オブ・ストーン』

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今年のお盆休みはいかがお過ごしでしょうか? 予定のある方もない方も、いま話題となっている配信オリジナルの映画、ドラマシリーズを一気見するのにいい機会です。otocotoでは選りすぐりの人気作・話題作を紹介します。

ダブルエージェントの女スパイの目的とは!?

ガル・ガドット主演のNetflixオリジナル映画『ハート・オブ・ストーン』が、8月11日より配信中だ。『タイラ ー・レイク』シリーズ 、『レッド・ノーティス』(2021)、『グレイマン』(2022)と、Netflixは火量・物量多めなアクション大作を世に送ってきたが、『ハート・オブ・ストーン』もまた、それに負けず劣らずハイテンションなスパイ・アクションである。

ガル・ガドット演じるレイチェル・ストーンは、イギリスの秘密情報部MI6の新人エージェント。パーカー(ジェイミー・ドーナン)、ヤン(ジン・ルージ)、ベイリー(ポール・レディ)の3人とチームを組んで、様々なミッションに挑む!‥‥というのは仮の姿で、その正体は独立諜報機関チャーターの超優秀スパイ。スパイが別のスパイ組織に潜入してスパイ活動をするという、なかなかにややこしい設定なのである。

このチャーターなる組織は、MCUに登場する国際平和維持組織S.H.I.E.L.D.にも匹敵する、超エリート集団。彼らの力の源は、「ハート」と呼ばれる超進化型AIだ。これを使って政府や軍の記録、携帯電話、送電網、銀行にいたるまで、あらゆるシステムに侵入。膨大なビッグデータを元に、未来を正確に予測することもできる。チャーターは圧倒的な情報力と軍事力を武器にして、秘密裏に世界の平和を守り続けてきた。

アンジェリーナ・ジョリー主演の『ソルト』(2010)、シャーリーズ・セロン主演の『アトミック・ブロンド』(2017)、ジェニファー・ローレンス主演の『レッド・スパロー』(2018)など、これまでも女性スパイを主役にした映画はコンスタントに作られてきたが、アクション成分で言えば『ハート・オブ・ストーン』はトップクラス。プロデューサーも務めているガル・ガドットは、小さい頃からアクション映画を観て育ったという。

「私は『007』や『ミッション・インポッシブル』、『ボーン・アイデンティティー』や『ダイ・ハード』を観て育ちました。私はこれらの映画が大好きです。アクションも、どんでん返しも、ドラマも、スケールの大きさも。観客が2時間をかけて、世界中を旅してジェットコースターのような感動を味わえる映画を作りたいのです」

https://www.thewrap.com/gal-gadot-heart-of-stone-interview/

バイクを乗り回したり、崖から大ジャンプしたり、スカイダイビングで急降下したり、ガル・ガドット姐さんはトム・クルーズばりのアクションを繰り広げる。確かにこの作品は、近未来的ガジェットと肉体アクションの融合という意味で、『ミッション・インポッシブル』シリーズを彷彿とさせる。特に最新作『ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE』(2023)が、正体不明のAIに立ち向かう設定だったことからも、『ハート・オブ・ストーン』との類似性が認められる。

だが、『ミッション・インポッシブル』が「トム・クルーズのSASUKEチャレンジ企画」として、ストーリーを希薄化させてまでもアクションに特化させていったのとは異なり、『ハート・オブ・ストーン』は非常にエモーショナルなストーリーだ。

数の論理によってハートが下す結論は本当に正しいのか? チャーターとしての使命を果たすために、MI6の仲間たちを犠牲にして良いのか? 彼女は常に逡巡し、傷つき、孤独を感じている。ChatGPTの登場でAIがより身近な存在になった今、我々は本当に人工知能を使いこなすことができるのか?という問いかけも、ヴィヴィッドに響いてくる。 『ハート・オブ・ストーン』は、2023年の今こそ語るべき現代的なテーマを孕んだ、エモーショナルなスパイ・アクション映画である。

文 / 竹島ルイ

作品情報
Netflix映画『ハート・オブ・ストーン』

世界を股にかけた平和維持組織に所属する陰の諜報(ちょうほう)員。最も危険な武器となりうる最重要テクノロジーがハッカーの手に渡るのを阻止するべく、彼女の命がけの戦いが始まる。

出演:ガル・ガドット、ジェイミー・ドーナン、アーリヤー・バット

Netflixにて全世界独占配信中

視聴ページ netflix.com/jp/title/81416533