2023年1月に全米で公開され、週末の3日間で約40億円を売り上げる大ヒットを記録した『M3GAN/ミーガン』。その勢いは止まることを知らず世界に広がり3月時点で全世界約230億円を売り上げた。『ソウ』シリーズ、『死霊館』ユニバースを手がけたジェームズ・ワンと、『パラノーマル・アクティビティ』や『ゲット・アウト』といった斬新な作品を放つブラムハウスがタッグを組んだ衝撃作がついに日本で公開となった。
殺人人形が登場するホラー映画という一見ありふれたテーマの本作に、なぜ世界が熱狂しているのかその魅力を紐解いてみたい。
ミーガンはチャッキー+ターミネーター
『M3GAN/ミーガン』のあらすじはこうだ。交通事故で両親を亡くし塞ぎ込んでしまった少女・ケイディを引き取ることになったおもちゃメーカーの研究者ジェマ。仕事一筋で独身のジェマにとって、育児はハードルが高く、姪のケイディに構ってあげられる時間を取れずにいた。
そこでジェマは研究段階のAI搭載の人形ミーガンの実験を兼ねて、ケイディに与える。ミーガンはあらゆる出来事から少女を守るようにプログラムされ、親しくなればなるほどケイディのためによいと思われることを実行していく。そしていつしか、ケイディに注がれる愛情が狂気となって暴走していく。
端的に表すなら、AI人形ミーガンはチャッキー+ターミネーターだ。
プロデューサーのジェームズ・ワンは「『死霊館』シリーズのアナベルとターミネーターを融合させた殺人人形」というが、アナベルはあくまで呪いの悪魔人形。厳密にいうと『チャイルド・プレイ』(1988)のチャッキーは、殺人鬼の魂が乗り移った人形。さらに、チャッキーは、簡単な会話機能を搭載した、当時のハイテクおもちゃ。ここがミーガンと同じだ。それにチェンソーを持って暴れ回るミーガンの姿を見たら、誰もが空目するだろう。
そして、かわいらしい少女の外見をしたお友達アンドロイドとして不必要ではないかと思われる圧倒的なパワー性能も持つ。それは、サクッと耳を引きちぎれるほど。そして攻撃を受けても無表情でびくともしない様はターミネーターのそれだ。
本作は、往年のホラー映画のオマージュやフレーバーがふんだんに散りばめられている。ホラー映画好きの製作陣の仕掛けに思わずニヤリとしてしまうことが多々ある。本作はいい意味で金曜ロードショー、1980年代のエポックメイキングな映画を見ているような気さえしてくるのだ。
しかしながら一方で新しい恐怖をテーマにしたホラー映画だとも感じた。本作は現実世界の今の恐怖を感じさせる映画で、昔ながらの恐怖映画を見てきた世代とデジタルネイティブな世代の感じ方はきっと違うだろうから面白い。人形、テクノロジーの暴走。こんなテーマの作品は散々観てきたはずだ。それでも本作には人々を熱狂させる魅力がある。