Nov 09, 2017 column

玉木宏×鈴木京香の匂い立つ色香に目がくらむ 舞台『危険な関係』

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それにしても、最近の玉木宏は、朝ドラ『あさが来た』(15年)、スペシャルドラマ『女の勲章』(17年)と、男性性を存分に押し出す役が多い。『あさが来た』は朝ドラという性質上、遊び人だった気配だけ見せていたに過ぎないが。近年、草食系男子が主流な中、肉食系を演じる選択も興味深い。今回の舞台は、その集大成だったようにも思う。

 

【撮影:細野晋司】

 

そんな遊び人の男と共犯関係を結びつつ、その実、操っているのではないかと思わせる女性を演じる鈴木京香のパワーも相当のものだ。彼女の役の行動は、単なる、愛憎によるものではなく、古来からずっと女性が虐げられてきたことへの復讐だ。知性だけでなく、女性としての肉体を使うことが最高の復讐だというように、彼女は、圧倒的に美しい。その姿はまるで、タロットカードにおける、ストイックな女教皇ではなく、愛にあふれた女帝のようだ。
彼女ひとりでなく、ヴォランジュ夫人を演じた高橋惠子と、ヴァルモンの叔母・ロズモンド夫人を演じた新橋耐子が、酸いも甘いも噛み分けたような貫禄があって、女性は決してか弱い被害者としてだけに終わらないのだと物語っているようにも見えた。

 

【撮影:細野晋司】

 

クライマックスは思いがけない方向に転がっていく。

千葉雄大演じる、社交界のドロドロにまみれきれない若い青年と、ある種、まみれてしまった玉木宏との対比も面白い。

 

文・木俣冬

 

 

シアターコクーン・オンレパートリー 2017
DISCOVER WORLD THEATRE vol.2『危険な関係』

 

2017年11月9日(木)~14日(火)
森ノ宮ピロティホール

作:クリストファー・ハンプトン
翻訳:広田敦郎
美術・衣裳:ジョン・ボウサー
演出:リチャード・トワイマン
出演:玉木宏、鈴木京香、野々すみ花、千葉雄大、青山美郷、佐藤永典、土井ケイト、冨岡弘、黒田こらん、新橋耐子、高橋惠子

公式サイト:http://www.bunkamura.co.jp/cocoon/lineup/17_dangerous/

 

文・木俣冬

 

文筆家。主な著書に「ケイゾク、SPEC、カイドク」(ヴィレッジブックス)、「SPEC全記録集」(KADOKAWA)、「挑戦者たち トップアクターズ・ルポルタージュ」(キネマ旬報社) 、共著「おら、あまちゃんが大好きだ! 1、2」(扶桑社)、「蜷川幸雄の稽古場から」、構成した書籍に「庵野秀明のフタリシバイ」、ノベライズ「マルモのおきて」「リッチマン、プアウーマン」「デート〜恋とはどんなものかしら〜」「恋仲」「IQ246~華麗なる事件簿」など。
エキレビ!で毎日朝ドラレビュー連載。 ほか、ヤフーニュース個人https://news.yahoo.co.jp/byline/kimatafuyu/ でも執筆。
初めて手がけた新書『みんなの朝ドラ』(講談社現代新書)が発売中!
http://bookclub.kodansha.co.jp/product?isbn=9784062884273

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