溢れ出す魅力を堪能できるコリンの出演作
魅惑的な顔立ちと高い演技力で引っ張りだこのコリンだが、ファンをあっと驚かせることになったのがマシュー・ボーン監督の『キングスマン』シリーズだろう。英国紳士を絵に描いたようなキャラクターでありながら、スーツ姿で諜報活動を行うハリー・ハートはコリンの魅力も相まって新たなスパイ像を作り上げた。さらに温和な雰囲気からは想像もつかないようなアクションまで展開し、前髪を振り乱しながらハードな立ち回りを演じる様子は、俳優として新たな一面を見せた瞬間だった。ハリーはタロン・エガートン演じるエグジーの父親代わりでもある役どころだが、こうした面ではコリンの父性が発揮されており、作品の枠を超えて実生活でもタロンと厚い信頼関係を確立。インタビューを受ける際に二人でじゃれあったり、お揃いのマグカップを贈りあったりと、コリンとタロンの仲良しぶりは多くのファンをほっこりさせている。
レニー・ゼルウィガー主演のヒットシリーズ『ブリジット・ジョーンズの日記』では、メインキャストのマーク・ダーシーを演じているコリン。本シリーズはレニーが等身大の未婚女性を演じて高い評価を受けており、キャリアアップを重ねた第3作『ブリジット・ジョーンズの日記 ダメな私の最後のモテ期』(16年)では “妊娠・出産”まで踏み込んだ。物語の軸としては「ブリジットが身ごもった子の父親は誰なのか」という視点で進み、その選択肢として挙げられたのが、元カレのダーシーと今カレのジャック・クワント(演じるのはパトリック・デンプシー)だ。クワントはユーモアと慈愛に溢れた人物であるのに対し、お堅い弁護士でありつつどこか間の抜けた一面も見せるダーシーは、コリンのラブコメセンスが大いに光る部分でもある。そういった人物造形を踏まえた上で訪れるラストの爽快感は、ブリジットの物語にひとつの区切りをつける意味でも深い味わいをもたらしている。
演技力という面において、やはりトム・フーパー監督の『英国王のスピーチ』(10年)を外すことはできない。吃音症を抱えるジョージ6世が妻や言語聴覚士の助力を得て一国の王として立ち上がる姿を描いた歴史ドラマで、コリンはゴールデングローブ賞とアカデミー賞双方の主演男優賞を獲得している。地位を捨てた兄の存在や第二次世界大戦などいくつもの状況がジョージ6世に圧し掛かるが、本作で最も重きを置かれているのは、ジェフリー・ラッシュ演じる言語聴覚士ライオネル・ローグと二人三脚で立ち向かった吃音治療とその成果にある。物語はジョージ6世とローグのやり取りを中心に展開されており、オスカー俳優であるジェフリーとの2ショットシーンは圧巻のひと言。ハイレベルな演技の応酬はぐいぐいと観客を惹きつけ、いつの間にか二人に愛着心が沸くほどだ。そんな魅力を存分に引き出したフーパー監督の演出力も含め、終盤のスピーチシーンに集約された二人の友情をしっかりと見届けてほしい作品だ。
なおコリンの最新作として、1964年に公開された名作『メリー・ポピンズ』の55年ぶりの続編となる『メリー・ポピンズ リターンズ』が2月1日に待機している。エミリー・ブラントがメリー・ポピンズを演じる本作で、コリンが扮するのはバンクス一家がピンチに陥った際に親身になってくれる銀行頭取のウィルキンズ。『キングスマン』ばりにピシッとキメたスタイルを見せているが、果たしてその人物像とは?
名作が多い海洋映画、本作でのドラマ面にも注目を
近年の海洋ドラマといえば、アン・リー監督の映像美が光る『ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日』(12年)や、ソマリア沖での海賊襲撃を描いた『キャプテン・フィリップス』(13年)、巨大な鯨との死闘を繰り広げる『白鯨との闘い』(15年)など、壮大なスケールで描かれた名作が多い。大海原には浪漫を感じつつ、そこにあるのは命を賭した極限のサバイバルでもある。『喜望峰の風に乗せて』ではどのようなドラマが展開されるのか、ぜひその目に焼きつけてほしい。
文/葦見川和哉
『『喜望峰の風に乗せて』
その頃のイギリスは、海洋冒険ブームに沸いていた。1968 年、一人でヨットに乗って一度も港に寄らず、世界一周を果たすというレースが開催され、ビジネスマンのドナルド・クローハーストが名乗りを上げる。アマチュアの挑戦にスポンサーも現れ、ドナルドは家族の愛を胸に出発する。だが彼を待っていたのは、厳しい自然と耐え難い孤独だった。さらにヨットのあちこちが故障し、日に日に遅れをとる。追い詰められたドナルドは、ある嘘の報告をしてしまい──。
監督:ジェームズ・マーシュ
脚本:スコット・Z・バーンズ
音楽:ヨハン・ヨハンソン
出演:コリン・ファース、レイチェル・ワイズ、デヴィッド・シューリス、マーク・ゲイティス
公開中
配給:キノフィルムズ
© STUDIOCANAL S.A.S 2017
公式サイト:http://kibouhou-movie.jp/
『キングスマン』
Blu-ray:1800円(税抜) DVD:1280円(税抜)
発売中
発売元:KADOKAWA/ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
販売元:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
© 2015 Twentieth Century Fox Film Corporation and TSG Entertainment Finance LLC. All rights reserved.
『ブリジット・ジョーンズの日記 ダメな私の最後のモテ期』
Blu-ray:1886円(税抜) DVD:1429円(税抜)
発売中
発売元:NBCユニバーサル・エンターテイメント
Film © 2016 Universal City Studios Productions LLLP. All Rights Reserved.
※2019年1月の情報です。
『英国王のスピーチ』
スタンダード・エディション
Blu-ray:2381円(税抜) DVD:1429円(税抜)
発売中
発売元:ギャガ 販売元:ハピネット
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