“生命は必ず道を見つける”
ギャレス・エドワーズはジュラシック・シリーズのことを「ファミリー映画のふりをしているホラー映画」と定義づけている。ギャレス・エドワーズの定義に更にもうひとつのジャンルを加えるならば、ジュラシック・シリーズは“ファミリー映画のふりをしている戦争映画”と言うことができる。長編デビュー作品『モンスターズ/地球外生命体』(2010) で『地獄の黙示録』(1979) で強烈な印象を残すワーグナーの「ワルキューレの騎行」を口ずさむシーンが象徴的だが、ギャレス・エドワーズはブロックバスター映画の最新VFXと戦争映画というジャンルを組み合わせてきた映画作家だ。『ジュラシック・ワールド/復活の大地』のジャングルシーンは、『ジュラシック・パークⅢ』の風景だけでなく、ベトナム戦争を描いてきた名作たちを想起させる。ギャレス・エドワーズのキャリア自体がジュラシック・シリーズに適しており、それは本作のゾーラが戦場カメラマンのように勇ましいキャラクターである理由ともつながっている。スカーレット・ヨハンソン曰く、ゾーラは「戦場にいる方が落ち着く」タイプの人間だ。
ルーミス博士は本物の恐竜をこの目で見るために、ゾーラたちの旅についてくる。恐竜を見たときのルーミス博士は目を輝かせる。目の前にある生命の美しさに感動する。恐怖に近づけば近づくほど、アドレナリンは全開になる。しかし恐竜は、生命の美に感動する人間に容赦なく襲いかかる。登場人物がふと気を抜いたとき、背後に恐竜の影が忍び寄ってくる=観客だけが気づくという、「うしろ!うしろ!」と言いたくなる古典的な演出は、いつの時代も有効だ。
廃墟となったインジェン社の複合施設で暴れまわる恐竜たちには、人間の勝手な都合によって創造され、“失敗作”という烙印を押され、取り残されてしまった“動物たち”の悲しみを感じる。『ジュラシック・ワールド/復活の大地』は、1993年の『ジュラシック・パーク』が警告した、“神の真似事をする危険性”というテーマに立ち戻り、改めて私たちの世界に問いかけている。ゾーラをはじめとするチームの、戦場をサヴァイヴしてきた傷だらけの肌や疲労感と共に。
最年少の登場人物であるイザベラのTシャツには、ラテン語で“生命は必ず道を見つける”という言葉が書かれているという。ギャレス・エドワーズとスカーレット・ヨハンソンをはじめとするキャスト陣、そしてスティーブン・スピルバーグは、『ジュラシック・ワールド/復活の大地』という映画に、かつて夏休みを賑わせた映画たちが持っていた生命を吹き込んでいる。アトラクション映画、エンターテインメント映画の真髄が徹底的に追求されている。かつて大人も子供も夢中になった映画を、映画館を再生(Rebirth)、再駆動させるために。必ず道は見つかるのだと。映画制作者たちの祈りのような決意に貫かれた勇ましい作品だ。あらためて敬意と拍手を送りたい。
文 / 宮代大嗣

不朽の名作『ジュラシック』シリーズの新たな章の幕開けとなる最新作。
監督:ギャレス・エドワーズ
脚本:デヴィッド・コープ
製作総指揮:スティーヴン・スピルバーグ、デニス・L・スチュワート、ジム・スペンサー
出演:スカーレット・ヨハンソン、マハーシャラ・アリ、ジョナサン・ベイリー、ルパート・フレンド、 マヌエル・ガルシア=ルルフォ、ルナ・ブレイズ、 デヴィッド・ヤーコノ、オードリナ・ミランダ、 フィリッピーヌ・ヴェルジュ、 ベシル・シルヴァン、 エド・スクライン
日本語吹替版キャスト:松本若菜、岩田剛典、吉川愛、楠大典、小野大輔、高山みなみ、大西健晴、玉木雅士、三上哲、水瀬いのり、小林千晃ほか
配給:東宝東和
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2025年8月8日(金) 全国ロードショー
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