並走に次ぐ並走!
スティーヴン・スピルバーグによると、シリーズ第1作『ジュラシック・パーク』は『ジョーズ』(1975) の陸上編を作る意図があったという。その意味で最初の“遭遇”である海の恐竜モササウルスの登場シーンは、やはり特筆すべきものがある。『ジュラシック・ワールド/復活の大地』の全編を通して言えることだが、この映画には得体のしれない巨大な生物の肌が、自分の真横を舐めるように通り過ぎていく感覚、ゾワッと鳥肌が立つ感覚に溢れている。
ギャレス・エドワーズによるメリハリの効いた恐怖演出の組み立て方が素晴らしい。家族関係を深めようと船旅に出たデルガド一家。帆船を俯瞰で捉えるカメラが、水中の巨大なモササウルスのシルエットを捉えるときの圧倒的な戦慄!そしてゾーラのかつての仲間であり、気さくな船長ダンカン(マハーシャラ・アリ)が操縦するDNA採取チームの乗ったエセックス号が、モササウルスとダイナミックに並走する。並走に次ぐ並走。恐竜たちの途方もないエネルギーと対峙するエセックス号。ここには極めてアトラクション的な楽しさが溢れている。この出色のシーンは、デヴィッド・コープが最初に書いたシーンでもある。
本作が直接的に呼び起こすシリーズ過去作は、『ジュラシック・パーク』とジャングルを彷徨い続ける『ジュラシック・パークⅢ』(2001)だが、スピルバーグはジュラシック過去作への参照をできるだけ避けることを望んでいたという。そこでギャレス・エドワーズは、スピルバーグのフィルモグラフィー全体へのリスペクトを捧げている。モササウルスのシーンは、『ジョーズ』への。空編に当たるケツァルコアトルスの登場する崖のシーンは、『インディ・ジョーンズ』シリーズへの。最年少の少女イザベラ(オードリナ・ミランダ)が仲良くなる無害で愛らしいアクイロプスの赤ちゃん“ドロレス”は、『E.T.』(1982)へのリスペクトに溢れている。また、シリーズの象徴であるTレックスの造形は、特撮映画の始祖レイ・ハリーハウゼンが手掛けた『恐竜グワンジ』(1969)に登場した恐竜に近いイメージを採用している。

