“ある歌”を聴いた人々は、次第に自らも口ずさむようになり、不可解な事件に巻き込まれてゆく。
この呪いのメロディーは、一体、どんな目的で、誰が作ったものなのか・・・・。
これは、8月11日に公開された『ミンナのウタ』のあらすじ。
本作は、人気ダンス&ボーカルグループGENERATIONS from EXILE TRIBEが、本人役でホラー初出演し、大ヒットホラー映画『呪怨』シリーズを手掛け、近年『犬鳴村』など話題作を手がけた、Jホラーの巨匠・清水崇が監督を務めた。『ミンナのウタ』は、ただのファンムービーでは終わらないジャパニーズホラーの新しい局面を見せている。
昭和世代も楽しめる新ジャパニーズホラー
人気アーティスト・アイドルの出演するジャパニーズホラーは、本作だけではない。多くは作品において、誰かを演じさせるが、『ミンナのウタ』では、本人役として演技をしている。これがホラーとして、いい意味でリアリティーを演出していると感じた。
物語は、ラジオ番組の収録中、長い間放置されていた投稿ハガキの山から、あるカセットテープを見つけたメンバーの小森隼が失踪するところから始まる。
実際、彼らはラジオ番組「GENERATIONSのGENETALK」(JFN)のパーソナリティーを務めているし、メンバーが不可解な現象に初めて出くわすのはダンスレッスン中だし、本編中にライブ映像も差し込まれているので、”実社会で起きている”というリアル感を増幅させている。
ファンから見れば、「メンバーはこういうことは言わない」などのご意見はあるだろう。そもそもニュースコメントであるように、ヴォーカリストの数原龍友は、俳優業をやらないので、演技パートに出演しない。鑑賞中は、こういった部分は気にならない。
数々の人気ドラマに出演している片寄涼太、白濱亜嵐はもちろんのこと、メンバーの演技に嘘くささがない。関口メンディーの驚嘆、佐野玲於の取り憑かれたような無表情、中でも、中務裕太のメンバー唯一”見える系”である演技は特筆すべきだと思う。
GENERATIONSがリアリティー部分を担う一方で、ホラー映画の狂言回しをしているのが、GENERATIONSのマネージャー役である早見あかりと、失踪事件と呪いのメロディーの謎を解く探偵役のマキタスポーツだ。このふたりが観る者に与える安心感はすごい。特にマキタスポーツは、シリアスパートもコメディパートも担い、なんならマキタスポーツのためのプロモーションムービーなんじゃないかと思うくらいなのだ。
TBSラジオ「東京ポッド許可局」、BS放送の「ザ・カセットテープ・ミュージック」(BS12)と番組出演している彼が、物語の根幹である、ラジオ局で見つかったカセットテープの謎を解くことに適任すぎる。そして主要キャスト唯一の昭和世代だ。”かぐや姫 解散コンサートの逆再生”といったオカルトうんちくを平成世代に伝えられるのは、彼しかいないだろう。同時に、ラジオ、カセットテープに熱狂していた昭和世代も本作を楽しめる作品だという証拠でもある。
そして忘れてはならないのが、監督が清水崇であるということ。本作はちゃんと怖い。
物語が進行していくにつれて、GENERATIONSメンバーが突然遭遇する、異様な少女をはじめとした数々の霊障は、観客を休ませてはくれないだろう。
『呪怨』シリーズで伽耶子と俊雄を生み出した彼は、本作では、さなという新たなホラーアイコンを登場させた。さなは「自分の歌で、私の世界に惹き込む」のが目的だ。誰かに聴いてほしいと作った「ミンナのウタ」。その制作過程がヤバい。タイトルに込められた真の意味がわかったときに感じるリアルなシリアルキラー感がヤバい。
そして散りばめられた違和感、呪いのメロディー「さなのうた」、GENERATIONSが歌う劇伴主題歌「ミンナノウタ」がラストに向かうにつれて、すべての意味と未来が収束していく。本当に最後の最後まで見届けてほしい。
文 / 小倉靖史
人気ラジオ番組のパーソナリティを務める、GENERATIONSの小森隼。収録前にラジオ局の倉庫で30年前に届いたまま、放置されていた「ミンナノウタ」と書かれた一本のカセットテープを発見する。その後、収録中に不穏なノイズと共に「カセットテープ、届き…ま…した…?」 という声を耳にした彼は、数日後にライブを控える中、突然姿を消してしまう。ライブ本番までのタイムリミットが迫る中、リーダーの白濱亜嵐はマネージャー、探偵とともに捜索に乗り出す。やがて、少女の霊の正体は、“さな”という女子中学生だということが判明するが、彼女が奏でる“呪いのメロディー”による恐怖の連鎖が始まって‥‥。
監督:清水崇
出演 : GENERATIONS、白濱亜嵐、片寄涼太、小森隼、佐野玲於、関口メンディー、中務裕太、数原龍友、早見あかり、 穂紫朋子、天野はな、山川真里果、マキタスポーツ
配給:松竹
©2023「ミンナのウタ」製作委員会
公開中
公式サイト minnanouta