Apr 15, 2022 column

第9回:今夏が待てないハリウッド大作『ブレット・トレイン』

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注目の俳優たち

ブラッド・ピットが軽い乗りのスタントマンを演じた『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』でアカデミー賞助演男優賞を受賞したのは記憶に新しい。今回はまぬけな殺し屋という不運なレディバグ(原作の七尾、通称・天道虫)の役。95%のアクションシーンをスタントマンなしで行ったことも含め、年齢を重ねて味のある俳優となっている。

ピットと争う殺し屋コンビはレモン(原作の檸檬)を黒人俳優ブライアン・タイリー・ヘンリーが好演。タンジェリン(原作の蜜柑)を演じたアーロン・テイラー=ジョンソンは雑誌・HEROのインタビューの中で、「原作は脚色され、その内容は当初はダークで非情な殺し屋たちの映画になるはずだったが、なぜかアクションシーンを演じているうちにコメディタッチに変わってしまっていた」とコロナ禍中ながらもマスクやバイザーをかぶって参加した撮影の様子を楽しそうに語っていた。

予告編ではブラッド・ピットと真田広之とのやりとりがオチで描かれていて、アメリカで一作一作、インディペンデント映画から大作まで数多く挑戦している日本人アクションスターの存在感はこの映画でも大きい。

女性陣のアクションもセンスがある。『デッドプール2』でリーチ監督とも仕事をしたことのある女優ザジー・ビーツのパワフルな演技。子役から活躍している女優ジョーイ・キングが小悪魔的にピンクのスーツでプリンス(王子)役で登場し、日本のポップカルチャーやアニメから切り取ったような粋な殺し屋となっていて、対ピットのアクションで好演している。新幹線の売り子としてアメリカ版ポスターの顔になっている福原かれんなどの新顔他、豪華なアンサンブル・キャストの顔ぶれも見どころである。

東北新幹線で日本を旅するような気分にさせてくれるスピード感あふれるこの映画。モダンな内装の新幹線の撮影など、ほとんどがロサンゼルスのソニー・ピクチャーズ・スタジオで行われたそうだが、まだまだ観光の大きな窓が閉ざされた日本への旅をいざなってくれる。明るくて元気のいい映画が見たくなるこのご時世。新感覚のアクション映画の存在が、グローバルなコンテンツの未来につながることに期待したい。

文 / 宮国訪香子

作品情報
映画『ブレット・トレイン』

久しぶりに任務に復帰した殺し屋(ブラッド・ピット)は、あるブリーフケースを盗むよう電話越しに謎の女性から指令を受ける。彼はコインロッカーに用意されていた銃を敢えて受け取らず、「この仕事には良い運気を感じる」と意気込み超高速鉄道に飛び乗るが、偶然乗り合わせていた超クセ強の面々に命を狙われるはめに‥‥。

監督:デヴィッド・リーチ

原作:伊坂幸太郎「マリアビートル」(角川文庫刊)

出演:ブラッド・ピット、ジョーイ・キング、アーロン・テイラー=ジョンソン、ブライアン・タイリー・ヘンリー、ザジー・ビーツ、ローガン・ラーマン、マイケル・シャノン ほか

配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント

2022年 全国公開

公式サイト bullettrain-movie.jp

宮国訪香子

L.A.在住映画ライター・プロデューサー
TVドキュメンタリー番組制作助手を経て渡米。 ニューヨーク大学大学院シネマ・スタディーズ修士課程卒業後、ロサンゼルスで映画エンタメTV番組制作、米独立系映画製作のコーディネーター、プロデューサー、日米宣伝チームのアドバイザー、現在は北米最大規模のアカデミー賞前哨戦、クリティクス・チョイス・アワードの米放送映画批評家協会会員。趣味は俳句とワインと山登り。