映画『トレイン・ドリームズ』の監督チーム
静かなセンセーションを沸き起こし、このコラムでも紹介した映画『シンシン/Sing Sing』(2024) 。グレッグ・クェダーとクリント・ベントリーの脚本・監督チーム作品の『シンシン/Sing Sing』は、グレッグ・クェダーが監督。今年、Netflixで配信した新たな意欲作『トレイン・ドリームズ』 (2025) は、クリント・ベントリーが監督。Netflixがオスカーに向けて推していたジョージ・クルーニー主演、ノア・バウムバック監督の『ジェイ・ケリー』やキャスリン・ビグロー監督最新作『ハウス・オブ・ダイナマイト』などの有名どころの作品を抜いて、批評家から大絶賛された。

本作は作品賞、脚色賞、主演男優賞ほかにもノミネートされるほど、注目度が急上昇し、クリティックス・チョイスではその美しい映像美に魅せられ、撮影賞をアドルフォ・ヴェローゾが受賞。その丹念に撮影された叙情的な作品のクォリティは新年に観る映画にふさわしい、静かで力強い作品。
物語の原作はデニス・ジョンソンの人気小説。舞台は20世紀初頭のアメリカ、アイダホ州の森の中。主人公ロバートは材木伐採の仕事につき、アメリカが産業国家となっていくその底辺で働く労働者。高くそびえ立つ森林を伐採する人間たちの、夢と野望。日雇いのような短期の仕事で、さまざまな人間、そして自然界とふれあい始めるロバートは中国人労働者への差別を目の当たりにしたり、年老いた白人労働者 (ウィリアム・メイシー) と、年を超えた友情を育む。木を伐採する過程で、自らが自然を破壊し、自然がいつか自らを破壊していくのではと、どこかで不安を感じながら生きる受身なアメリカ人の姿は、最近描かれる人物像とも大きく違って、とても良心的。
自然の脅威、さらには、生死を通じてロバートを包む幽玄的なものとの対話がこの映画の中で淡々と続けられていく。求めていた家族とその「幸せ」とはという問いとともに、残酷な天命の下で生き続けなくてはならないロバートの、ある意味、『フランケンシュタイン』と似た哲学的会話が繰り広げられる感動作となっていて、必見である。