Apr 01, 2022 column

第8回:アカデミー賞前代未聞!主演男優賞を受賞したウィル・スミスの処罰に揺れるハリウッド

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最悪なスターに送られるゴールデン・ラズベリー、ラジー賞

全てのジョークに暴力をふるったらコメディアンはやっていけないと大勢のコメディアンから反論があったように、アメリカ人のユーモアのセンスに一つ一つ反応していたらきりがない。アカデミー賞と同時期に行われるラジー賞は最低映画に賞を与える授賞式で歴史は古く、今年で42回目を迎えている。1980年に第一回が行われ、10周年特別賞ではなんども最低男優賞に選ばれたシルベスター・スタローンが10年間の最低男優賞受賞。20世紀最低主演女優賞にはマドンナ、通算8回ノミネートにもかかわらず、一つも賞をとれなかったアーノルド・シュワルツェネッガーは歴代最低ノミネート賞を受賞している。

映画『キャットウーマン』で最低主演女優賞を受賞したハル・ベリーは、ラジー賞の授賞式に参加。「良い敗者になれないなら、良い勝者にもなれないわ」とジョークをポジティブに受け止めて登場し、人気を増した。今年、ウィル・スミスはラジー賞の汚名返上賞を受賞している。映画『ハウス・オブ・グッチ』でラジー賞の最低助演男優賞を受賞したのがジャレッド・レト。映画『ダラス・バイヤーズクラブ』でオスカー助演男優賞を受賞依頼、確実に上昇している男優の一人で、今月公開のマーベル新作映画『モービウス』の主役モービウスを演じ、吸血鬼のようなアンチ・ヒーロー誕生でさらに上昇気流に乗っている。

ジャレッド・レト / 映画『ダラス・バイヤーズクラブ』アカデミー助演男優賞受賞
©Greg Harbaugh / A.M.P.A.S.
©Sony Pictures / Courtesy Everett Collection

アカデミー賞は年々、視聴率が落ち、テレビ番組としての面白さが追究できずに苦戦している。今年はコロナ禍から解放され、視聴率向上のため、裏方部門の授賞式を事前に編集して放送することを決定。主要な協会員から非難が殺到していた。さらにはウクライナのゼレンスキー大統領が授賞式の開催間際に、アカデミー賞への出演をリクエストし、その対応に追われただけでなく、映画『ミスティック・リバー』や『ミルク』で主演男優賞を受賞したショーン・ペンが現在、ロシアのウクライナ侵攻をドキュメントしていて、「ゼレンスキー大統領の演説をアカデミー協会が断ったら、私が持っているオスカー像を人前で溶かす」とアカデミー協会に決断を迫る映像がながれ、リアリティ・ショーなみに話題になったものの、視聴率は去年よりもさらに下がる結果となったようだ。

©Kyusung Gong / A.M.P.A.S.

外国語映画部門では濱口竜介監督の『ドライブ・マイ・カー』が批評家予測100%の確率で受賞。ツイッターでは、濱口監督のスピーチが何度もカットされたことへの不満が殺到。「主演男優賞のウィル・スミスには6分間も与えられていたのに濱口監督に失礼だ」と、ファンから監督への熱いメッセージが寄せられていた。

文 / 宮国訪香子

作品情報
映画『モービウス』

天才的な頭脳を持つ医師マイケル・モービウス。彼は幼いころから、治療の術がない血液の難病を患っていた。これまで多くの命を救いながらも、己の病を治癒する方法だけを見出せずにいたモービウスは、自らの身体に実験的な治療を施す。それはコウモリの血清を投与するという、危険すぎる治療法だった。そのまま姿を消したモービウスは、2か月後、ロングアイランド沖に座礁したコンテナ船に突如現れる。病で痩せ細った姿から一変、顔には血色が戻り、隆起した筋肉が全身を覆っていた。さらに、超人的パワーとスピード、そして周囲の状況を瞬時に感知するバットレーダーや飛行能力を手にしたモービウスだが、同時に彼の中で、抑えきれない〝血への渇望“が生まれる。やがて彼の身体に更なる変異が起こり・・・。

監督:ダニエル・エスピノーサ

出演:ジャレッド・レト/マット・スミス/アドリア・アルホナ/ジャレッド・ハリス/アル・マドリガル/タイリース・ギブソン

配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント

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2022年4月1日(金) 全国公開

公式サイト morbius-movie.jp

1970年代のアメリカ、サンフェルナンド・バレーを舞台に、アラナとゲイリーの恋模様を描き出す。

監督・脚本・撮影:ポール・トーマス・アンダーソン

出演:アラナ・ハイム、クーパー・ホフマン、ショーン・ペン、ブラッドリー・クーパー、ベニー・サフディ

配給:ビターズ・エンド、パルコ ユニバーサル映画

© 2021 Metro-Goldwyn-Mayer Pictures Inc. All Rights Reserved.

2022年 日本公開

宮国訪香子

L.A.在住映画ライター・プロデューサー
TVドキュメンタリー番組制作助手を経て渡米。 ニューヨーク大学大学院シネマ・スタディーズ修士課程卒業後、ロサンゼルスで映画エンタメTV番組制作、米独立系映画製作のコーディネーター、プロデューサー、日米宣伝チームのアドバイザー、現在は北米最大規模のアカデミー賞前哨戦、クリティクス・チョイス・アワードの米放送映画批評家協会会員。趣味は俳句とワインと山登り。