Sep 17, 2025 column

女優ミシェル・ウィリアムズ主演「人生の最期にシたいコト」の女性の視点 (vol.73)

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女優たちの饗宴

ミシェル・ウィリアムズのキャリアは人気TVシリーズから始まっている。「ベイウォッチ」(1993-1994)でデビューして以来「ドーソンズ・クリーク」 (1998-2003) で人気を博し、映画デビューは『名犬ラッシー』(1994) 。アン・リー監督の『ブロークバック・マウンテン』(2005) で、アカデミー助演女優賞にノミネートされて以来、ハリウッドも大注目。共演したヒース・レジャーと婚約し、第一子を設けたものの、関係は破局。その4ヶ月後にレジャーが自殺したことによって彼女が叩かれる時期もあった。

しかし、映画『ブルーバレンタイン』(2010)、『マリリン7日間の恋』 (2011) そして、『フェイブルマンズ』(2022) と着実に自らの演技を磨き上げ、主演女優賞に3回、助演女優賞(『マンチェスター・バイ・ザ・シー』(2016) ) に2回と、だれもが注目する女優となっていることは確実。さらには、『ブルーバレンタイン』でプロデューサーを務め、ハリウッド映画の伝説的振付師ボブ・フォッシーとブロードウェイダンサーで女優のグウェン・ヴァードンを描いたTVシリーズ「フォッシー&ヴァードン ~ブロードウェイに輝く生涯~」(2019) の主演、プロデュースを手がけ、エミー賞リミテッドシリーズ部門で作品賞、主演女優賞にノミネートされ、見事、主演女優賞を受賞している。シリーズのプロデュース兼監督を務めたトーマス・カイルと2020年に結婚し、現在、前夫との子供も含め4人の子供の母親でもある。とくにヒース・レジャーとの間に生まれた娘マチルダに対して、「娘の時代は私の時とは違って、急進的にお互いを受け入れる時代。多様性と平等に突き進む世代には教えられることばかり」と話し、このシリーズの役作りでも娘に支えられたと語っていた。

© Sarah Shatz/FX

ニッキー役に抜擢されたのが、日本ではそれほど知られていないコメディエンヌのジェニー・スレイト。人気バラエティ番組「サタデー・ナイト・ライブ」のレギュラーキャストとして出演していたり、『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』(2022)へ出演、アニメーション映画『マルセル 靴をはいた小さな貝』ではマルセルの声、そして脚本家としてもクレジットされている。エミー賞でもリミテッド・アンソロジー部門助演女優賞でノミネートされていて、デッドライン誌のインタビューでは「このシリーズは登場人物全員それぞれが重要で、主人公モリーのトラウマが軸にありながらも、本人が人生の最後の最後まで前進して新しいことを体験することに希望を感じるのです。」と語っていた。

そして、娘と疎遠になっている母親を演じるのが女優シシー・スペイセク。彼女を一躍有名にしたのが、スティーヴン・キング原作、ブライアン・デ・パルマ監督映画『キャリー』(1976) 。『歌え!ロレッタ 愛のために』(1980) でアカデミー賞主演女優賞を受賞。『イン・ザ・ベッドルーム』(2001)でもアカデミー賞主演女優賞にノミネート、その後も『ヘルプ ~心がつなぐストーリー~』(2011) など、歳を重ねても、常に印象の残る演技で定評がある。この「人生の最期にシたいコト」ではモリーの幼少期のトラウマの部分で、母と娘の確執が描かれていて、見応えがある演技を見せた。シリーズは女性が中心に描かれているが、彼らを支える男性たちがまた魅力的で、最後まで目が離せない感動作品に仕上がっている。

文 / 宮国訪香子

作品情報
「人生の最期にシたいコト」

モリー・コーチャンと親友ニッキー・ボイヤーが一緒に作ったポッドキャストで共有されている実話を基にした作品。ステージIVの転移性乳がんの診断を受けたモリー・コーチャンは、親友のニッキーを相棒に、人生で初めて複雑な性的欲求を探求するために夫と別れることを決意する。

企画・制作:キム・ローゼンストック、エリザベス・メリウェザー

出演:ミシェル・ウィリアムズ、ジェニー・スレイト

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the photographs : “Courtesy of FX Networks

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宮国訪香子

L.A.在住映画ライター・プロデューサー
TVドキュメンタリー番組制作助手を経て渡米。 ニューヨーク大学大学院シネマ・スタディーズ修士課程卒業後、ロサンゼルスで映画エンタメTV番組制作、米独立系映画製作のコーディネーター、プロデューサー、日米宣伝チームのアドバイザー、現在は北米最大規模のアカデミー賞前哨戦、クリティクス・チョイス・アワードの米放送映画批評家協会会員。趣味は俳句とワインと山登り。