May 02, 2025 column

テクノロジー依存の反射鏡 Netflix「ブラック・ミラー シーズン7」 (vol.66)

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シーズン7 人気第1位のエピソード「宇宙船カリスター号:インフィニティの中へ」(第6話)

シーズン7の人気ランキング第1位にランキングされているのは第6話。さらに、個々に独立したシリーズの中で1作だけ例外となっている「宇宙船カリスター号:インフィニティの中へ」。この作品はシーズン4の「宇宙船カリスター号」の続編で、スタートレックとマルチプレイヤーのゲーム世界が一体となったエンターテインメント性に満ちている。

主人公ナネット(クリスティン・ミリオティ) は尊敬する天才プログラマー、ロバート・デイリー(ジェシー・プレモンス)が共同で立ち上げたオンラインゲーム「インフィニティ」の制作会社で働きはじめる。尊敬のまなざしでロバートに接するナネットだったが、社員からはロバートには気をつけるようにと忠告される。ロバートはナネットの態度の変化に気がつき、彼女に気づかれないようにコーヒーカップに残ったDNAを採取。ナネットはいつの間にか自己意識を持つデジタル・クローンとなり、そのほかの社員クローンとともに、ロバートが操る宇宙船の乗組員となる。ロバートが選んだ乗組員は、彼のことを見下したメンツばかり。その中には、ロバートのことを蔑む共同パートナー、会社のCEOであるジェームズ・ウォルトン(ジミ・シンプソン)の姿もあった。

マルチプレイヤーゲーム、DNA採取で可能にした違法のクローン技術など、私たちが見慣れている「スター・トレック」のパロディのようなデジタルユニバースは、ゲームを作る側、プレイする側も入り混じるなど、今までに見たことのないサイバー空間。その世界は、嫉妬、リベンジ、証拠隠滅という人間感情を奇想天外に描き、天才プログラマー対、会社員クローンのサバイバルとなり、約90分の配信時間は映画並みに豪華で見応えがある。

主演している俳優陣も今のハリウッドをリードする俳優ばかり。『THE BATMAN-ザ・バットマン-』 (2022~) のスピンオフ「THE PENGUINーザ・ペンギンー」(2024~) シリーズで、マフィアのボスの娘を演じた女優クリスティン・ミリオティの演技は迫真に迫るもので、プログラマーの卵の女性が、チームのリーダーとなっていく様子を熱演。マット・デイモンにそっくりなジェシー・プレモンスは演技派で、マット・デイモンの仕事にも影響を及ぼしそうなほどの勢いで、興味深い役を次々に演じている。近年、『パワー・オブ・ザ・ドッグ』(2021) や『シビル・ウォー アメリカ最後の日』(2024) などで強烈な役を演じ、後者の主演を務めた女優キルステン・ダンストと夫婦共演する機会も多い。最後に、ロバートのライバル、ジェームズ・ウォルトンを演じた俳優ジミ・シンプソンも、HBOのドラマシリーズ「ウエストワールド」(2016~2022) 、AppleTV+「Pachinko パチンコ」(2022~) 、「ダーク・マター」(2024~) 、そしてこの「ブラック・ミラー」シリーズと現在ひっぱりだこで、この作品では正反対な一人二役を演じて、絶好調である。

Netflixのグローバルな魅力は、韓国のK-カルチャーをリードするグローバルエンタメ企業CJ ENMの多様なコンテンツから、80カ国以上でランキング1位獲得という過去最多記録をたたき出した社会派ドラマ「アドレセンス」(2025~) のワンカット撮影と、見る人を圧倒する優れたコンテンツで溢れている。2025年のNexflixはセンセーショナルなコンテンツで、エンタメ業界をリード。ゴールデンウィークに一気見したいドラマが満載である。

文 / 宮国訪香子

作品情報
Netflix「ブラック・ミラー」

チャーリー・ブルッカーによるダークで風刺に満ちたアンソロジーの新シリーズが襲来この空想は、いつかあなたの現実になるかもしれない。

制作:チャーリー・ブルッカー

出演::オークワフィナ、ピーター・キャパルディ、アシム・チョードリー ほか

Netflixにて独占配信中

作品サイト netflix.com/jp/title/70264888

宮国訪香子

L.A.在住映画ライター・プロデューサー
TVドキュメンタリー番組制作助手を経て渡米。 ニューヨーク大学大学院シネマ・スタディーズ修士課程卒業後、ロサンゼルスで映画エンタメTV番組制作、米独立系映画製作のコーディネーター、プロデューサー、日米宣伝チームのアドバイザー、現在は北米最大規模のアカデミー賞前哨戦、クリティクス・チョイス・アワードの米放送映画批評家協会会員。趣味は俳句とワインと山登り。