May 02, 2025 column

テクノロジー依存の反射鏡 Netflix「ブラック・ミラー シーズン7」 (vol.66)

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シーズン7 人気第2位のエピソード「ユーロジー」(第5話)

急速に進むテクノロジーの開発が我々の生活にどう影響を及ぼすかなど、文化や科学の交差点となる特集を多く記載しているWIREDマガジンの「ブラック・ミラー」のシーズン7の人気ランキングによると、第2位が第5話の「ユーロジー」。

昨年、『ホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリディ』(2023) で、アカデミー賞主演男優賞にノミネートされていたポール・ジアマッティもまた、新シリーズで、憂いのある話の主人公を好演している。物語は、元恋人の死の通知からはじまる。主人公フィリップの家にドローンのデリバリーが飛んできて、箱を開くと、それは追悼ビデオプロジェクトのデバイス。彼女の思い出を呼び起こす装置をオンにすると女性のナレーターが話しかけ、彼女を思い出すための写真はないかと質問される。古い写真の静止した3D空間に入り込み、当時の様子から記憶を手繰り寄せることができる夢のようなテクノロジーだが、フィリップにとっては不愉快な装置。元恋人の存在を自らの記憶からすべて削除するほどに、その過去は苦い思い出だったのである。

中年男性の感情を揺るがす破られた写真。2人がいた場所、聴いた音楽などから彼の切ない感情が再び呼び起こされる。自らの決断は正しかったのか。2人だけにしか分からなかった過去が再び甦るとき、後悔、そして誤解を超えた2人の愛がふつふつと湧き上がる。実らなかった恋愛への郷愁、そして追憶がこのエピソードをよりやるせない未練で包み、テクノロジーを通じて過去の過ちに気づいていく感動作に仕上がっている。