Aug 28, 2024 column

第52回:ゲイリー・オールドマン主演、人気スパイ小説のドラマシリーズ AppleTV+ 「窓際のスパイ」シーズン4がもうすぐ解禁

A A
SHARE

ロンドンの下町をくまなく愛すスパイたち

ドラマシリーズを見ていて楽しいのは、撮影されるロンドンの下町などが擬似体験できる点にもある。シーズン3、そして5の全エピソードを監督するのがソウル・メッツスタイン。彼はスコットランド出身で、物語の舞台となる下町に住み、あちこちの狭い通りを熟知。シーズン3でリバーが逃げ回るシーンなどに裏通りをくまなく活用できたと満足の様子。「窓際のスパイ」のシリーズは全6エピソードずつで見やすいだけでなく、シーズン毎に一人の監督が統括して演出するため、それぞれ一貫性がある。

ロンドンのストリート事情はまるで東京のように入りくんでいて、決して華やかとはいえない場所ばかりだが、そのローカルさがたまらない。ロンドン市内、バービカン駅近くにあるビルの一角が事務所。スローホースたちはその正面からでなく裏口から入っていく。壊れたドアを、スパイたちが試行錯誤しながら蹴って開けるシーンなど、欠陥している建物も彼らを嘲笑しているようで、毎回、ユーモアが絶えない。諜報業務を行う際には、ホーというふしだらなハッカーが陣取っていて、年配でオフィスの掃除係にも見える事務員のスタンデイッシュは、鋭い諜報才能に優れていて、陰でラムの右腕のように動いていたりと、それぞれの特徴もおもしろい。さらには、MI5の隠蔽された史実を熟知しているリバーの祖父デイヴィットの存在も合わせ、どのシーズンもスリル満点で視聴投資の価値ありである。

・・・

シーズン1

新人MI5スパイのリバーは、訓練中に同期でライバルのスパイダーの誤指示によって、大きなミスをおかし、スラウハウスへと左遷される。祖父の七光りでMI5に入ったのでは毒舌なラムにスパイとしての能力を疑われ、理由を知らされずに某ジャーナリストのゴミの中身を漁る仕事を与えられる。そんな中、人質事件がおこり、真相解明に命をかけるリバーは、事件の真相を追求する過程で、自身のスラウハウス行きの本当の理由を探り当てる。

シーズン2

引退した元MI5工作員の不審な死を探るラム。リバーはいみじくも、平静を装う祖父がその工作員の名前に反応し、何か隠していることに気づく。冷戦時代の陰謀がうごきだし、数々の罠に嵌められていくリバーとスローホースのスパイたち。オフィスラブも浮き彫りになり、スローホース面々の素性が少しずつ明かされていく。

シーズン3

MI5の女性長官リーダーシップ争いが熾烈化。さらにMI5を利用しようとする右翼系政治家の画策の中でリバーたちが翻弄され、その合間に本当の拉致事件が起きるという、ダブル、トリプルの駆け引きの巣窟となるのがこのシーズン。冷静沈着なラムが、ここぞというところで画期的な行動力をみせ、危機に陥るチーム脱出に命を賭けるところも必見。

シーズン4

リバーの生い立ちが分かるエピソードとなっている。ラムはいち早く、自ら目をかけていたリバーの不審な旅立ちに気付き、平行線で真相解明すべくスローホース全員が試される。長官になり損ねたMI5副長官のタヴァナーと新長官との関係がコミカルにスタートしながらも、本格的な権力争いとなって、ラムとスローホースたちを巻き込んでいく。

文 / 宮国訪香子

Apple TV+「窓際のスパイ」シーズン4

M15(英国情報局保安部)の落ちこぼれエージェントたちと、彼らを率いる傲慢で悪名高いチームリーダーのジャクソン・ラム。スパイの世界の策略をかいくぐり、危険分子から英国を守る彼らの姿を、ダークなユーモアを効かせて軽快に描くドラマ。

監督:ソウル・メッツスタイン

原作:ミック・ヘロン「窓際のスパイ」シリーズ(ハヤカワ文庫 NV )

出演:ゲイリー・オールドマン、ジャック・ロウデン、クリスティン・スコット・トーマス

シーズン4は9月4日からApple TV+にて全世界同時配信

公式サイト tv.apple.com

宮国訪香子

L.A.在住映画ライター・プロデューサー
TVドキュメンタリー番組制作助手を経て渡米。 ニューヨーク大学大学院シネマ・スタディーズ修士課程卒業後、ロサンゼルスで映画エンタメTV番組制作、米独立系映画製作のコーディネーター、プロデューサー、日米宣伝チームのアドバイザー、現在は北米最大規模のアカデミー賞前哨戦、クリティクス・チョイス・アワードの米放送映画批評家協会会員。趣味は俳句とワインと山登り。