Jun 20, 2024 column

第49回:南仏 アヌシー国際アニメーション映画祭2024  ーコンペ映画13作品を予告編とともに一挙公開! 

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アヌシー映画祭の華やかさからは伝わらない米アニメ業界の雇用問題

アヌシー国際アニメーション映画祭の姉妹イベント「Animation is Film」がGKIDS主導で毎年おこなわれている。今年10月のロサンゼルス開催日程(10月18〜20日)がアヌシー閉幕とほぼ同時に発表されたばかり。アヌシーで特別披露されたドリームワークス新作『The Wild Robot(原題)』(2024) も観客のスタンディング・オベーションで高評価。私も先月、バーバンクのドリームワークス・スタジオで行われた特別プレゼンに参加。

今年20周年を祝うドリームワークス映画はアカデミー賞前哨戦に向けて早くからプレス記者会見を行い、社運をかけているような意気込みだった。予告編を見ただけでも、日本でも受け入れられそうな感動作が期待できる。原作は絵本作家ピーター・ブラウンの「野生のロボット」。主人公のロボット、ロズが難破した船によって島に漂流。お助けロボットであるため、動物たちの助けになりたいと必死でつくし、AI頭脳で動物と意思の疎通ができるようになる‥‥と主役のロボット、ロズの声を演じた女優ルピタ・ニョンゴが、物語のクライマックスに至るまでを熱く語っていた。メジャー・スタジオと並び、Netflixのアヌシー国際アニメーション映画での宣伝も華やかで、クレイ・アニメーションの代表格『ウォレスとグルミット』の新作映画披露ほか、多様なアニメーション配信番組をショーケース。Netflixでは、20億人以上の会員がアニメーション視聴しているそうで、舞台には、巨匠ギレルモ・デル・トロ監督の姿もあり、『ギレルモ・デル・トロのピノッキオ』(2022) に続くストップ・モーションアニメの次回作に向けて気合いが入っていた。

アヌシー国際アニメーション映画祭のラインナップを見るとアニメーション業界がとても活性化しているように見えるが、北米では企業が業績の悪化を理由に去年から、従業員の解雇を増やしている。カートゥーン・ブルーの記事などによると、今年1月11日には、映画『マイ・エレメント』(2023) で6つのアニメーション賞を受賞したディズニー経営のピクサーが今年に入ってレイオフを決定。1300人のスタッフ中20%弱の従業員が解雇され始めている。ドリームワークス・テレビジョンもほとんどのプロダクションがカナダに移行。2月27日にはソニー・インタラクティブ・エンタテイメントが900人をレイオフ。ゲーム業界も同じく解雇が増え、プレイステーションのロンドンオフィスもシャットダウンした。ワーナー・ブラザーズ・ディスカバリーは、デジタルファーストで推し進めてきたルースター・ティース(会社)をシャットダウンさせ、150人のフルタイム従業員を解雇している。昨年のハリウッド労働ストライキでとくに論点となっていたAIがらみのアニメーション・コンテンツ製作など、スタジオの今後の方針が定まらないのか、ロサンゼルス在住の多くのアニメーター達が今後のアニメーション業界の動きと睨み合っている。

文 / 宮国訪香子

アヌシー・アニメーション国際映画祭2024

仏アルプスの麓アヌシーで先週幕を閉じたアヌシー国際アニメーション映画祭。オフィシャルコンペ、コントラシャン(コンペ外)、新アヌシープレゼンツ長編映画部門の総勢35作品のほか、短編映画やテレビアニメもショーケースされ、幅広いジャンルのアニメーション、VR作品が一挙に披露。映画祭に併せて、世界最大級のアニメーション見本市MIFAが同時開催。

開催:2024/06/09 ~ 2024/06/15

公式サイト annecyfestival.com 

宮国訪香子

L.A.在住映画ライター・プロデューサー
TVドキュメンタリー番組制作助手を経て渡米。 ニューヨーク大学大学院シネマ・スタディーズ修士課程卒業後、ロサンゼルスで映画エンタメTV番組制作、米独立系映画製作のコーディネーター、プロデューサー、日米宣伝チームのアドバイザー、現在は北米最大規模のアカデミー賞前哨戦、クリティクス・チョイス・アワードの米放送映画批評家協会会員。趣味は俳句とワインと山登り。