Jun 20, 2024 column

第49回:南仏 アヌシー国際アニメーション映画祭2024  ーコンペ映画13作品を予告編とともに一挙公開! 

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テラン監督とも競う若手監督の意欲作

著名監督も競うこのコンペで最優秀賞を受賞した作品の中には、日本でも人気のウェス・アンダーソン監督の『ファンタスティックMr. FOX』(2009) がある。確実なファン層を持つウェス・アンダーソン監督作品は、監督のアヌシー初参加ということで特別上映。監督が過去作やアニメーション制作におけるチームワークなどのマスタークラスをおこない、若手監督と語り合ったそうだ。

同じくストップモーション映画で、今年のカンヌ国際映画祭でもスペシャルスクリーニングとしてプレミアされたのが、8年前に短編『僕の名前はズッキーニ』(2016) でファン層を確立したスイス人監督クロード・バラス監督の長編作。『Sauvages (原題)』(2024) の舞台は東南アジアの赤道直下、ボルネオ島。その熱帯雨林で育った主人公の少年がオラウータンの赤ちゃんを助けたことから、パーム油の小規模農家である家族対、熱帯林の保護などの人間関係の板挟みになっていくというエコロジーがテーマのスイス映画。

フランス映画『アーティスト』(2011)でアカデミー作品賞を受賞したフランス人監督、ミシェル・アザナヴィシウスの初アニメーションドラマ『The Most Precious of Cargoes (原題) 』(2024) は、アウシュヴィッツに向かう貨物車から捨てられた赤子を拾う女性を追う、ホロコーストを描くシリアスなアニメーション映画。

八鍬新之介監督の『映画 窓ぎわのトットちゃん』は、戦時中ながらも、ほがらかな主人公で対照的。同名の黒柳徹子 (文) 、いわさきちひろ (絵) の絵本がなつかしいが、「きみは本当にいい子なんだよ」というメッセージを新世代に発信してアヌシーでの評価も高く、特別賞ポール・グリモー賞を受賞。ポール・グリモーとは、宮﨑駿監督も多大なインスピレーションを得たという仏アニメーション作家である。

『A Boat in the Garden(原題) 』(2024) は仏アニメの巨匠ジャン=フランソワ・ラギオニ監督作品で、1950年代終戦後のフランスの田舎町が舞台。カンヌ国際映画祭の星空の下で行われたナイト上映(Cinema de la Plage) でもプレミアされたこの映画は、夢見る少年とその父親の船ができるまでをやさしい色調で描いたルクセンブルグ・フランスの共同製作。

アニメーション映画で扱う冒険物語も各国いろいろな趣向をこらしている。『Into The Wonderwoods(原題)』(2024) も注目作の一つ。2007年第60回のカンヌ国際映画祭で審査員賞を受賞した、マルジャン・サトラピ監督の自伝的漫画『ペルセポリス』(2007) の共同監督だったヴァンサン・パロノーと『Zombillenium (原題)』(2017) のアレクシス・デュコード監督によるアニメーション映画。カンヌで上映されて以来、すでに45カ国にセールスされたこの作品は、グリム童話「赤ずきん」にインスピレーションを得ていて、主人公のメガネの少年が家族旅行の途中で置いてきぼりになり、奇想天外な森の中を探検しながらお婆さんに会いにいくという冒険ファンタジー。

中国から唯一コンペで競ったのがヤン・ジーガン監督作『The Storm(原題)』(2024) 。少年が船で繰り出す冒険物語で、大胆な水彩画のような映像美が注目されていた。

日本からは去年公開された百瀬義行監督作品『屋根裏のラジャー』(2023)も冒険/アドベンチャーのジャンルでコンペ入り。ジブリ作品と比べられる批評もあれば、吹き替えの声優が主人公のキャラとマッチしていて最高だったという好評価もあった。